物流ITコンサルとは?支援内容や成果物、価格相場をプロが徹底解説
「WMSの老朽化が進みEOL(End Of Life)を迎えるため対応を考えないといけないが、どう進めれば良いのかわからない・・・」
「誰かに相談したいが、コンサルの支援内容や費用感などが分からないので不安・・・」
WMSやTMSなどの物流システムを活用してきた中、システムの老朽化が進み、その対応に頭を悩ませている企業の方も多いのではないでしょうか。
物流の現場では、
- システム刷新や移行に関する知見を持つメンバーが社内にいない
- 業務に合わせてカスタマイズされ過ぎてうまく移行できるか不安
そんな声をよく耳にします。
ただこういった悩みを抱えたまま、時が解決してくれることはありません。現状の問題点を可視化して課題を紐解いていかない限り、直面している問題に対応できる時間は刻一刻と減っていきます。
そのような方にお勧めするのが、物流ITコンサルへの相談です。
物流ITコンサルはシステムに関する豊富な知見やノウハウに加え、物流現場の経験値も持ち合わせているため、新しいシステムと業務のあるべき姿を明確にすることが可能です。
しかしコンサルというと、
・どんなことをしてくれるのかわからない
・成果が出るのか不安
・費用がどれくらいかかるのか気になる
など不安に感じることが出てくると思います。
そこで本記事ではそれらの疑問を解消できるように、物流ITコンサルとして15年以上のキャリアを持つプロが、物流ITコンサルのサービス内容や、価格の相場観、支援事例などを詳しくご紹介していきます!
物流ITコンサルへの依頼を検討すべきか否か、皆さまの判断基準にお役立てください。
【記事監修】園田真之介
Rally Growth株式会社 代表取締役社長。株式会社FrameworxでSEとしてキャリアを形成後、株式会社BayCurrent Consultingを経て現職。専門は物流・ロジスティクス×IT領域。過去に大手アパレルの物流・倉庫最適化や大手自動車メーカーの物流システム刷新の案件をコンサルタントとして多数経験。2021年グロービス経営大学院卒(MBA)
Table of Contents
1.物流ITコンサル サービスの全体像
物流ITコンサルの支援内容のサービスとしては、上記の図(①~⑧)が全体像になります。
※特に倉庫内でのシステム利活用やマテハン活用に関する事案が多いため、本稿では倉庫内のIT化を例としてご説明していきます。
8ステップありますが、大きくまとめると以下のように3つのフェーズにまとめられます。
No. | フェーズ | 物流ITコンサルの役割 |
①~② | 企画 |
|
③~④ | ベンダー選定 |
|
⑤~⑥ | 実行 |
|
上記の支援の中で、最も重要かつ物流ITコンサルとしての力量が問われるのが①~②の企画フェーズです。
なぜならこの①~②こそが業務とシステムのあるべき姿を定める、プロジェクト企画の根幹となるフェーズになるからです。
具体的には「①現状分析」で既存の物流業務や物流システムの全体像を把握し課題を抽出した後、「②To-Be像まとめ」で課題を解決するための業務・システムのあるべき姿(To-Be像)をまとめていきます。
その「あるべき姿(To-Be像)」に合わせて、その後のRFP(Request for Proposal)が作成され、その条件を満たすことのできるベンダーが選定されていくので、そこにズレが生じているとシステム刷新・移行をした際に期待した効果が得られないことになってしまいます。
もちろんそれ以降のフェーズも重要になりますが、この①~②のクオリティが物流ITコンサルのバリューに直結すると言っても過言ではありません。
その重要な「①現状分析」、「②To-Be像まとめ」から順に、各フェーズで支援する内容の詳細を2章以降で説明していきます。
※尚、⑤~⑧は基本的にベンダー主導で実施となる事項のため、本稿では特に物流ITコンサルが主導する①~④の企画からベンダー選定フェーズまでについて詳細を解説していきます。 |
2.物流ITコンサル 企画フェーズ
本章では先ほど最も重要とお伝えした、
・①現状分析
・②To-Be像まとめ
について詳しく解説していきます。
2-1.①現状分析
タスク | タスク詳細(イメージ) | 成果物(例) |
定量分析 |
|
|
定性分析 |
|
|
現状分析のフェーズでは大きく「定量分析」と「定性分析」に分けて分析や現状の可視化を行っていきます。現状を正しく高い解像度で把握できないと、後続のTo-Be像が正しく策定できないため重要なフェーズになります。
成果物のイメージがないと分かりにくい部分があると思いますので、以下でサンプルをもとに詳細を説明していきます。
■定量分析
あくまでイメージになりますが、物量データや生産性などについて分析を行い、上記のような図にまとめていきます。
もちろん図をまとめるだけでなく、
・作業実績から●曜日と●曜日に残業が集中して発生している
・当該曜日の*時頃に突発的な出荷作業が集中しており、オペレーションを変えることで残業抑制を実現できる可能性あり
など、その分析結果から導き出せる課題改善への示唆もセットでまとめていきます。
これらの傾向分析をまとめて、事業特性として整理していきます。
■定性分析
定性分析では、
・現場見学
・経営層ヒアリング
・業務知見者ヒアリング
などを行いながら、下記のような成果物をまとめていきます。
【現状(As-Is)の可視化に向けた資料 |
・業務鳥瞰図 |
・業務フロー |
・マテリアルフロー |
・業務タイムチャート |
・庫内レイアウト |
・ヒアリング内容まとめ |
・システム全体像整理 |
例えば以下が業務フローのアウトプットサンプルになります。
■業務フローサンプル
業務フローを作成することで、以下のようなことが可能になります。
・作業のプロセス、時間軸の可視化
・作業の関係者、システムとの関係性の可視化
これらが可視化されてくることで、プロセスがいびつになってしまっている箇所への気づきを得たり、ボトルネックになっていそうな箇所を洗い出すことへ繋げていくことが可能になります。
尚、この作業を行うときは関係者からの事前ヒアリングは行いつつ、必ず現場を実際に見て一次情報を確認してから作成します。
理由としては関係者としては日常になっているためおかしいと感じていないフローや盲点になり抜けてしまっているフローなどが存在するケースもあるため、重要な抜け漏れがないようにコンサルタント自身が現場を見た上でフロー図を作成する必要があるからです。
現状分析の成果物は多岐に渡るため、全てをここで紹介できませんが、抜粋して「業務タイムチャート」と「庫内レイアウト」について以下で解説します。
■業務タイムチャート サンプル
タイムチャートを作成することで、時間の使い方を可視化し、以下のような点で課題がないか確認を行います。
・作業指示のタイミングの可視化
・倉庫内における人の配置や作業タイミングの可視化
前述の業務フロー図でプロセス全体における時間軸は把握可能ですが、それとは別に1日のタイムチャートを作成することで、業務別にかかっている作業時間や工数、業務に対する1日の時間の使い方が可視化されます。
■庫内レイアウト サンプル
倉庫など在庫を保管している場所のレイアウト図を作成し、以下のようなポイントで場所の使い方に課題がないか確認していきます。
・倉庫内における物の保管場所や作業スペース
・倉庫内における作業動線
例えば頻繁に入出荷する商品の保管場所が倉庫の奥など不適切な場所にあることで、入出荷バースまでの距離が遠くなり、倉庫内で無駄な物・人の移動が発生しているケースも多々あります。在庫保管場所のレイアウト図を作成することで、これら「無駄な物・人の移動」に関する課題箇所を発見することが可能です。
※入出荷バース:荷物を運ぶトラック等がある場所
物流コストの3割が人件費、特にその中でもピッキング作業に人手がかかるといわれますが、これらの保管場所や動線が適切でないことでピッキング作業者の時間・コストが嵩んでいるケースも多いため、このタイミングで可視化を行います。
いかがでしょうか。物流ITコンサルが現状分析フェーズにおいて、多岐に渡って分析・資料作成を行うことをご理解頂けたかと思います。
次に②To-Be像まとめについて解説していきます。
2-2.②To-Be像まとめ
・業務鳥瞰図/システム機能配置図 サンプル
このフェーズでは、現状分析で可視化した内容をもとに既存業務やシステムに対する課題を整理し、将来へ向けたTo-Be像を策定していきます。現状分析(As-Is整理)から見えてきたTo-Be像へ向けたGapをアクションプランとし、優先順を明確にした後にロードマップを策定していきます。
具体的には上記の「業務鳥瞰図/システム機能配置図」のような俯瞰のTo-Be像に加え、①現状分析でご紹介したような「業務フロー」、「タイムチャート」などについても、あるべき姿をまとめていきます。
ただ、
・To-Be像はどうやって決めていくのか?
・To-Be像へ向けたGapや打ち手のイメージがつかない
という方もいらっしゃると思うので、以下で具体的に説明していきます。
■To-Be像の策定方法
こちらは結論としては「経営・事業要件から逆算する」という形になります。ビジネスとして何か達成したいゴールがあるからこそ、システム導入などの打ち手を検討しているため、その「経営・事業要件」を改めて明確にし、それを実現するために必要な体制を言語化していく必要があります。
例えば以下のようなイメージです。
上記の図のように、経営目標として「●●億円の売上UPを目指したい」といった目標があるはずで、そこから逆算していくと、1日に必要な出荷体制や工程単位のKPIが決まってくると思います。そしてそれを実現するために、業務フローやマテハン・システムに必要な差分が見えてきます。
もちろん実際には経営・事業要件は多岐に渡り、上記のように1つということはないので、To-Be策定時には多数の論点と向き合い、消化をしていかなくてはいけません。
この辺りを事業会社内だけのリソースだけでやりきる難しさがあると思いますので、是非積極的に物流ITコンサルという専門家のリソースや知見を活用しても良い箇所かと思っています。
■To-Be像へ向けたGapや打ち手のイメージ
「To-Be像へ向けたGap」と前述しましたが、実際にどのような視点でGapが生まれてきて、どのような打ち手のイメージになるかご説明します。
以下が業務面でのよくある課題をまとめた表になるのですが、大きく「A:場所の課題」と「B:人の課題」に分かれます。
■[業務]よく起こる課題タイプとGap・打ち手のイメージ
上記表の打ち手イメージにある通り課題の解決方法は、
・WMSの導入
・マテハンの利活用
・作業内容や人員配置の見直し
・入出荷量の平準化
など課題により様々です。
物流ITコンサルなのでIT(システム)しかやらない、ということではなく、業務課題に対してフラットに打ち手を検討していきます。
続く3章ではベンダー選定フェーズについて解説していきます。
3.物流ITコンサル ベンダー選定フェーズ
ベンダー(システムベンダー)選定フェーズでは、物流ITコンサルは具体的に以下のようなタスクを担っていきます。
・③RFP作成
・④ベンダー選定
以下で具体的に説明します。
3-1.③RFP作成
RFP作成のフェーズでは大きく以下3つのタスクに対応していきます。
タスク | タスク詳細(イメージ) | 成果物(例) |
プロジェクト計画策定 |
|
|
ベンダー選定準備 |
|
|
RFP作成 |
|
|
それぞれ成果物ベースでご紹介します。
■プロジェクト計画策定
RFPを作成するにあたり、まずは「②To-Be像まとめ」から導き出したアクションプランについて、実行計画を立てます。
この実行計画が無いとベンダーに対してスケジュール感の説明ができないため、最初の時点で見通しを作成します。
■ベンダー選定準備
ベンダー選定準備では候補として検討するベンダーのリストや、ベンダー選定に向けてどのような基準で評価を行うのか、プロジェクト関係者の目線を揃えるための評価ガイドラインを作成していきます。
・ベンダーリストイメージ
・ベンダー評価ガイドラインイメージ(50項目ほどある中で一部を抜粋)
この評価ガイドラインが曖昧なままベンダー選定フェーズに進んでしまうと、主観的な選択になってしまったり、プロジェクト関係者の中で意思統一が図れないまま進んでしまったりするため、この評価方法を綿密に定義しておくことが肝要です。
■RFP作成
このフェーズの最後にベンダーに提示するためのRFPを作成していきます。主な項目は以下の項目になりますが、特に重要なのは「7.To-Be業務全体像」です。
【RFP項目 サンプル】
-
- 提案依頼概要
- 提案依頼手続
- 提案依頼内容
- プロジェクト実施にあたっての取り決め
- 設計・開発・テスト要求
- 移行・教育要求
- To-Be業務全体像
- 機能要求
- 非機能要求
その他の項目もシステムベンダーに検討を依頼する際に必要な項目になりますが、この「7.To-Be業務全体像」をしっかり提示することで、ベンダー側の業務理解の解像度があがり、提案のクオリティUPも期待することができます。
逆に言うと、物流ITコンサル側にとっては、ここの伝え方・説明が重要といえます。コンサルタントによっては「7.To-Be業務全体像」をそこまできちんと説明しないケースもあるので、依頼するクライアント側の目線としては1つのチェックポイントとして考えても良いかもしれません。
3-2.④ベンダー選定
タスク | タスク詳細(イメージ) | 成果物(例) |
RFPプレゼン |
|
|
提案管理 |
|
|
プロジェクト計画更新 |
|
|
ベンダー選定フェーズでは主に上記のようなタスクに対応していきます。
■RFPプレゼン
こちらは前フェーズで作成したRFPをもとにベンダーへ詳細説明を実施するタスクになるため詳細は割愛しますが、前述の通り業務To-Be像をしっかり提示して説明することが重要です。
■提案管理
ベンダーと提案日程を調整したり、提案書類の管理を行ったりします。
その中でも重要なタスクは「提案内容の評価/比較」です。この提案内容を以下サンプルのように定量で比較できる表に落とし込んでいき、クライアントと定性・定量の両面から評価を検討していくことが主要なアクションになります。
・評価シート(サンプル)
■プロジェクト計画更新
評価が完了し最終的に依頼するベンダーが決まったら、後はそのベンダーからの提案内容を盛り込んだプロジェクト計画を更新していきます。
・プロジェクト計画の更新イメージ
この際、プロジェクト計画の更新に加え、To-Be像の更新やプロジェクトの推進体制の明確化などもあわせて行っていきます。
いかがでしたでしょうか?ここまでは物流ITコンサルが主にプロジェクトの企画フェーズで担うタスクや成果物についてご紹介してきました。おおよそどんなことをサービスとして受けられるのか、というイメージはお持ちいただけたのかと思います。
一方、コンサルタントに依頼するとなると、その依頼にかかる費用も気になる所かと思います。
次章では物流ITコンサルに依頼した場合の費用について、相場観をご紹介していきます。
4.物流ITコンサルの費用
上記の図が物流ITコンサルの費用相場をまとめた図になります。
企業規模と期間を軸に、各社にとって最小規模の人員でプロジェクトを実施した場合を想定しています。実際はここに、以下の要素が加味されて見積もりされるため、必ずこの金額になるとはもちろん言えませんが、一つの目安にはなると思います。
【加味される要素】
・プロジェクトの難易度や複雑性(必要なコンサルタントの質)
・対応リソース(必要なコンサルタントの量や稼働率)
倉庫オペレーションや、輸送オペレーションの改善コンサルなどそれらが絡まないケースであれば、3PL企業などが得意としている分野でもあり1ヵ月30-50万円~見つけられる可能性もあると思います。
しかしITシステム導入などが絡む場合、上記のように小規模コンサルでも1ヵ月200万円~程度(かつ複数月稼働)は見込んでおく必要がでてきます。理由としてはコンサルティングにおける難易度の違いが挙げられます。
具体的には以下のステップにおいてコンサルに求められる難易度が高くなります。
上記の通り各ステップで経験や知識が求められるため、費用感だけでなくコンサルの力量も見定めていく必要があります。
物流ITコンサルの費用感や、大手コンサル・小規模コンサルなど規模別のコンサルティングファームの特徴を以下の記事で詳しくまとめていますので、以下の記事も是非ご覧ください。
いかがでしょうか。費用感をつかんでいただけたかと思いますが、皆さんの会社が物流ITコンサルを依頼すべきか否か、まだ判断に迷う部分もあると思います。
そこで次章では物流ITコンサルを依頼すべきケースと、依頼をお勧めしないケースについて解説していきます。
5.物流ITコンサルに依頼すべきケース/依頼をお勧めしないケース
まず前提として悩んだら物流ITコンサルに一度相談してみることをお勧めします。費用をかけて発注するかは別にして、どんなことができるのか実際に聞いてみることで解像度を上げることができますし、営業の過程が壁打ちにもなるので、自社課題の整理になったりすることもあるからです。
ただ、どんなことを事前にケアした上で相談した方が良いか、ということは気になるポイントだと思います。
そこで物流ITコンサルティングを依頼すべきケースと、依頼をお勧めしないケースを表にまとめてみましたので是非参考にしてみてください。
以下で一つずつ各ケースを見ていきます
5-1.物流課題の経営におけるインパクトの大小
当然の話ではありますが、自社や当該事業における物流の重要性に鑑みて依頼すべきか否か判断を行うことが必要になります。物流ITコンサルを受け、改善施策を実行した際に得られるリターンが自社にとって大きいと思えるのであれば是非依頼すべきでしょう。
具体的には、以下のような可能性があるのであれば、是非依頼を検討することをお勧めします。
◆物流の課題を解決しないと他社と比較してサービスレベルが落ち、競争優位性が失われる
◆物流に関するコストが増加しており、早々に根本から解決しないと事業P/Lが赤字に転落しかねない
逆に例えば「営業体制の再構築」や「新たな資金調達」など経営や事業運営、財務面を考えると他に先に手をつけるべき優先順位の高い課題があれば、まずはその課題に着手すべきでしょう。
5-2.経営陣や上層部のコミットメントの有無
物流オペレーションは性質上コストセンターにあたるため、投資対効果がシビアに見られがちな事案になりがちです。その際、経営陣や上層部の理解と投資に対する同意をしっかり得られていないと、物流コンサルティングを受けた後に改善実行の手前でプロジェクトが中止になるなどちゃぶ台返しをくらうことが多いため、必ず経営陣や上層部から改善に投資するコミットメントを事前に得ておくことが重要になります。
以前に支援を行ったプロジェクトにおいても、良い企画を作っても結局上層部が判断をしきらず、実行せずお蔵入りになってしまった企画が多数あります。
経営陣や上層部のコミットを得るところからコンサルタントのフォローをもらうことも可能なので、迷った場合は相談してみることをお勧めします。
5-3.物流改善プロジェクトへの専任メンバーアサイン可否
自社内で物流改善プロジェクトに専任のメンバーをアサインできるか否かも、コンサルティングを依頼すべきか否かの判断軸になります。これはコンサルタントだけでは、社内を完全に動かしきれないからです。
例えば社内で物流改善プロジェクトに関する稟議を上げる、営業など受注を管理する部署と連携し波動の調整を行う、プロジェクトの細部を把握し発注者としての意図をベンダーに伝える、などは、支援はできるもののコンサルだけでは完遂できない事案です。
その役割を発注権限を持つ役職者が代行する、もしくは他の仕事をしている社員が兼業として代行するということも不可能ではありませんが、いずれも他の仕事がある場合プロジェクトへのコミット力が弱くなり、スケジュール遅延や判断ミスが起こりがちです。
専任の適正な人数はプロジェクトの規模にもよりますが、小さなプロジェクトでも少なくとも1-2名はプロジェクトに専念できる自社メンバーがアサインできる状態になってからコンサルティングを依頼した方が良いと言えます。
5-4.課題を解決したいか・施策ありきか
よくコンサルティングのご依頼を受ける際に、「WMSを導入したい」「マテハンを導入したい」という施策ありきで導入支援のご依頼を受けることがあります。これ自体が悪いことではないのですが、社内でその施策実施ありきになった状態でコンサルティングを依頼することはお勧めしません。
理由としては丁寧に課題を紐解くと、その施策がベストな選択肢でない可能性もあるからです。
例えば入荷作業に時間がかかりすぎるので、自動倉庫を導入したという話があったとしても、課題を紐解くと倉庫のキャパシティの問題や流通拠点の見直しを優先すべきだった、などの結論になることも少なくありません。
具体的な施策のイメージをもってお話いただくことは重要ですが、上層部の方からの指示で施策ありきの検討になっているケースを拝見することも多いので、フラットな目線で検討できる状態で相談することをお勧めします。
5-5.改善施策の実行まで投資できる予算の有無
改善施策の企画まで到達しながら、実際にその企画が実行されないままお蔵入りになるケースが実は多々あります。様々な理由がありますが、その筆頭格が「予算がなくなった」という理由です。
いくら良い企画を立てても実行されなければ意味がないので、きちんと実行までできる予算が組めるか見通しがついてからコンサルティングを依頼することをお勧めします。もちろん費用感が分からないケースもあると思うので、依頼を確定させる(発注)前に費用感を確認できていれば問題ありません。
ここまでは物流ITコンサルを依頼すべきか否か、その判断軸についてご紹介してきました。次章では具体的に物流ITコンサルに依頼した事例や成果をご紹介していきます。
6.物流コンサルティングの具体的な事例
6章では、当ブログを運営する物流ITコンサル「Rally Growth株式会社」の支援事例をもとに具体的な事例をご紹介していきます。
以下は大手EC企業様をご支援した際の状況や成果をまとめたものになります。
具体的な内容としては、大型マテハンと連動したWMSのリプレイス or マイグレーションを検討するプロジェクトです。物流ITコンサルとして定量・定性分析(担当者ヒアリングや現場見学、データ分析)を中心とした現状分析を行い、既存業務を高解像度で可視化しました。
それに加え、システム特性を可視化し、システムリプレイスを行う際の要点を整理し、ベンダーとコミュニケーションの上、「リプレイスが最適である」という結論を、クライアントとともに導き出しました。
【クライアント・案件概要】
- 業界:小売
- 業種:EC
- 企業規模:売上高1,000億円以上
- 従業員数:1,000名以上
- 支援基幹:6ヵ月
6-1.支援前の状況・課題
このケースではクライアントにおいて個別最適化されたWMSサーバーの保守期限が迫っており、システムリプレイスもしくはマイグレーションを検討されている所でRally Growthが支援に入ることになりました。
WMSの問題だけでなく、自動倉庫などのマテハンの老朽化の対策も検討が必要な状況であり、「今後の事業成長を見据えた上で、あるべき物流体制をとは」という問いに、物流業務・システム・マテハンと広いフォーカスの中で答えを出していく必要がありました。
一方、クライアント社内ではWMS・WCSの機能配置が曖昧となっており、内製ツールが乱立してしまっている状況でもありました。
6-2.支援内容と成果
物流ITコンサルとして、まずは定量・定性分析を通じて、システム、倉庫オペレーションの「As-Is」を整理し、その上でクライアントが実現させたい戦略を叶える「To-Be案」を可視化していきました。
そのイメージは「2章:物流ITコンサル 企画フェーズ」でご紹介した通りの内容です。
一般的なRFIの構成・内容とクライアント要求を踏まえ、マテハン連携を念頭に置きながら、現行のWMSベンダーやマイグレーションベンダー複数社にシステム刷新提案を依頼し、今後のあるべき物流体制を見据えた上でのシステム構成の整理や、物流拠点配置の論点を整理を完遂。
最終的に「WMSのリプレイス」が適切であると、クライアントの経営陣も納得のうえ結論を導き出すことに成功し、迷いなく新WMS導入に向けてプロジェクトを進行できる状態になりました。
迷いなく、戦略に自信を持ってシステムが導入を進められるということは、後戻りが基本的にできないシステム導入を進めるうえで非常に重要な状態であり、このポイントにたどり着けたことについて、クライアントからも大きな評価を得ました。
いかがでしたでしょうか。6章では物流コンサルティングにおける実際の事例をもとに支援内容をご紹介してきましたが、具体的にどのコンサルティング会社にお願いをすれば良いか、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。
次章ではお勧めする物流ITコンサルの選び方についてご紹介していきます。
7.お勧めする物流ITコンサルの選び方
物流ITコンサルの選び方で重要なポイントは、以下の3点です。
- 物流の仕組みや物流現場に対する造詣の深さ
- 一般的な物流システムやマテハンの情報における幅広い知見の有無
- 物流現場の改善実行における経験値の多さ
それぞれ解説していきます。
7-1.物流の仕組みや物流現場に対する造詣の深さ
当然ながら物流の仕組みや、物流現場を理解していることが極めて重要になります。なぜなら現場の知見を持っていないコンサルタントが分析・企画を手がけると、現場から「そんなことは対応できない、現場をわかっていない」と反発をくらい、絵に描いた餅になることがほとんどだからです。
よく聞くケースとして、物流の仕組みや現場をあまり知らないコンサルティング会社に依頼をしてしまい、分析結果も企画立案もなんとなくしっくりこないまま、お金は払ってしまったのでアウトプットは出してもらったものの、結局実行されずに企画がお蔵入りになって終わることが多々あります。
物流の仕組みや現場について深く知りつつ、ビジネスの上流工程も理解していて、適切な金額感で請け負ってくれるコンサルティング会社が極めて少ないため、こういったことがどうしても起こりがちですが、やはり餅は餅屋に頼むことが重要です。
7-2.一般的な物流システムやマテハンの情報における幅広い知見の有無
物流の仕組みや現場についての情報に加え、よく物流の現場で使われているシステムやマテハンに関する知見もチェックしたい項目の一つです。
※マテハン:マテリアルハンドリング
なぜなら現場の実情を定性・定量の両面から捉えていくためには、これらの情報が欠かせないからです。
よくコンサルティングを受ける際に、コンサルタントが課題の仮説を立て、物流の現場を視察したりすることで、その仮説を検証していくことがありますが、その際視察による定性情報だけでなく、データなどから定量的に分析を行っていく必要が出てきます。
しかしよくあるケースとして、一般的な物流現場のシステムを知らないことで、どこからその検証用のデータを持ってきたら良いかがわからず、物流現場の実情を検証データを紐づけられず分析が浅くなる、ということが起こりがちです。
また視察において定性的に情報を見ていく際にも、各マテハンでどのようなことができるのか知見を持っていないことで、課題の可視化ができない、もしくは視察の現場で仮説の深掘りができない、ということが起こり得ます。
結局は正しい情報に基づいた分析から特定された課題に向き合うことが、改善効果創出には最も重要な要素となるため、これらのシステムやツールの情報を正しく把握していることがコンサルティング現場でも重要になります。
7-3.物流現場の改善実行における経験値の多さ
物流現場では業務・人員・ITシステム・輸送車など様々な要素が複雑に絡み合っているため、改善実行において成果を創出するのは簡単ではありません。その際、過去に改善実行を実現してきた経験値がコンサルタント側にあると、企画の時点で抜け漏れのない改善案を提案しやすくなります。
例えばWMSのようなITシステムを導入する際、経験値のあるコンサルタントであれば単なるシステムの導入支援だけでなく、そのシステムを使用する現場の人たちのチェンジマネジメント(システム活用に対する意識改革)も含めて企画提案・実行支援が可能になったりします。
いわゆる改善実行における肝は何か、ということを経験から理解しているコンサルタントがいるとプロジェクトをスムーズに進むことが多いです。
いかがでしたでしょうか。上記のようなコンサルタントをもしお探しであれば、当ブログ運営で物流ITコンサルに強みを持つRally Growthがお勧めです。次章ではRally Growthの特長をお伝えします。
8.物流ITコンサルを依頼するならRally Growth株式会社がお勧め
2021年7月に創立したRally Growthは、現在は6人のメンバーでミドルマーケットを中心としたDX化や新規事業構築支援を行っています。代表の園田を中心に物流業界に知見のあるメンバーが集まっており、主に物流DXに関連する案件を中心に、複数の企業を支援しています。
Rally Growthの特徴として大きく以下3点が挙げられます。
- 物流の仕組みや物流現場に加え、ビジネスの上流工程にも深い理解を持つ
- 物流改善の企画を多数実施してきた経験
- スピード感をもって期待に応える高い機動力と柔軟性
8-1.物流の仕組みや物流現場に加え、ビジネスの上流工程にも深い理解を持つ
代表の園田を中心に過去に物流の改善企画を多数支援してきているため、一般的な物流の仕組みや物流現場の実情、そして物流システムやマテハンなどの知識が豊富です。また大手コンサルファーム等で物流に関するビジネスの上流から課題解決を支援してきているため、ビジネスの上流工程にも深い理解を持っています。
課題が何か、何から手をつければ良いのか、初期段階で悩んでいる状態でもフラットに相談が可能です。
8-2.物流改善の企画を多数実施してきた経験
前述の通り多くの物流現場の改善支援をしてきているため、改善企画を提案する際に絵に描いた餅にならない、きめ細やかな分析・企画立案が可能です。具体的には以下のようなプロジェクトにおける支援の経験があり、幅広い課題・ニーズに対応することが可能です。
【過去支援プロジェクト例(他多数)】
以下の支援実績インタビューなども併せてご参照ください。
■エム・シー・ヘルスケアホールディングス様 新物流システム構想策定 ご支援後インタビュー
8-3.スピード感をもって期待に応える高い機動力と柔軟性
Rally Growthでは成果を早期に求める事業会社の支援にはスピード感や機動力・柔軟性が重要と考えているため、依頼されたことは最大限スピード感をもって対応することや、クライアント社内のコミュニケーションを円滑に進めるための支援なども積極的に行っています。
また抽象的な悩み、まだふわふわしていて相談して良いかも分からない状態からの相談にも対応する柔軟性を心掛けています。少しでもお悩みであれば是非お声がけください。
【お問い合わせ先】
Rally Growth株式会社への物流に関するコンサルティング案件のご相談はこちらより承っております。ぜひお気軽にご相談ください。【資料請求】
以下よりRally Growthのサービス資料もご請求いただけます。
ご支援の全体像や具体的なご支援プランを掲載していますので、物流を中心としたDX支援のサービスをご検討の方はぜひご一読ください。
<Rally Growth サービス資料イメージ>
9.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事では主に以下3点についてお話してきました。
◆物流ITコンサルにおいては企画フェーズの構想策定力が肝
◆物流コンサルティングを依頼すべきケースと依頼すべきでないケースの判断は必要
◆物流コンサルティングを依頼するのであれば、物流の仕組みや物流現場に加え、ビジネスの上流工程にも深い理解を持つ会社に相談することがお勧め
皆さんの物流に関する悩みが少しでも改善することを祈っています!
- この記事を書いた人