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WMSの選び方はこれに従うだけ!失敗しない究極の10ステップ

カテゴリー:logistics
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WMS 選び方

「自社でWMSを導入することになったが、種類が多すぎてどのようなものを選べばいいかわからない」
「導入にかかるコストを考えると、なんとしても自社にマッチしたものを一発で失敗せず選びたい」

WMSの導入に向けた検討を開始し、いざ製品やサービスを選ぶ段階になったところで、上記のようなお悩みを持つ担当者様は多いのではないでしょうか。

結論から申し上げると、おおよそ以下のケースをもとにお勧めのWMSタイプは決まってきます。

WMSのタイプ 企業規模イメージ お勧めするケース
SaaS 中小企業中心 ・小規模で一般的な物流業務が中心
・標準的な機能があれば十分
パッケージ

カスタマイズ
中堅企業中心 ・一定の物量があり、業務パターンがやや複雑
・取引先数が多く、多様な納品形態・保管形態の対応が必要
・フルスクラッチ開発に対応するほどの資金や人的リソースが社内にない
フルスクラッチ 大企業中心 ・定常的に多くの物量を扱っており戦略的な物流体制の構築が必要
・自社の業務に合わせてシステムを構築したい

※タイプ別の詳しい説明は、記事内「2-1.STEP3.WMSのタイプを選ぶ」をご覧ください

WMSのタイプは大きく「SaaS」「パッケージ」「フルスクラッチ」に分けられますが、企業規模や企業が直面しているケースにより概ね上記の図のように切り分けられます。

とはいえ、それだけでは具体的なWMSを選択することは難しいため、今回は「失敗しないWMSの選び方」を以下の10ステップにまとめました。

【10ステップ】失敗しないWMSの選び方
準備編 STEP1.自社の課題を洗い出す
STEP2.課題解決に必要なWMSの機能をピックアップする
実践編 STEP3.WMSのタイプを選ぶ
STEP4.必要な機能を備えたWMSをリストアップする
STEP5.対象規模・業種・業界がマッチしていないものは候補から外す
最終チェック編 STEP6.外部システム・周辺機器との連携はできるかをチェックする
STEP7.5~10年先も使える製品かをチェックする
STEP8.直感的に使いやすいかをチェックする
STEP9.サポート体制が整っているかをチェックする
STEP10.情報セキュリティ対策は万全かをチェックする

この10のステップを順番に行えば、

・機能
・コスト
・倉庫の規模
・業種
・業界
・操作性
・サポート
・セキュリティ

の全てがあなたの会社とマッチした製品を選ぶことができます。

WMSは一度導入すると簡単に他の製品に乗り換えるのが難しく、特に導入失敗の原因となりやすい「機能面」と「コスト面」においては、慎重な判断が必要です。

【WMS選びのよくある失敗例】

・最小限の機能のみを搭載したWMSを選んで安く済んだが、かえって業務効率が悪化した
→荷主からのサービスに応えられなくなり、結局従来のオペレーションに戻る

・コストが予算を上回る製品を選んでしまった
→業務の効率化には成功したが、初期費用の赤字をいつまでも取り返せない

・扱いづらい(現場の業務とマッチしない)製品を選んでしまった
→業務の標準化ができずカスタマイズ費用がかさんでコスト増

本記事では、WMSの失敗しない選び方を、どこよりも実践的・具体的に解説しています。

記事の前半では選び方のレクチャー、後半では実際にお勧めの製品を紹介していますので、数あるWMSの中から「自社にとってベストな選択」を取ることができるでしょう。

少し長い記事ですが、ぜひ最後までお付き合いください。

 

【記事監修】園田真之介

物流 コンサルタント
Rally Growth株式会社 代表取締役社長。株式会社FrameworxでSEとしてキャリアを形成後、株式会社BayCurrent Consultingを経て現職。専門は物流・ロジスティクス×IT領域。過去に大手アパレルの物流・倉庫最適化や大手自動車メーカーの物流システム刷新の案件をコンサルタントとして多数経験。2021年グロービス経営大学院卒(MBA)

1.失敗しないWMSの選び方【準備編】

WMS 選び方(準備)

失敗しないWMSの選び方、準備編として必要なステップは、以下の2つです。

・STEP1.自社の課題を洗い出す
・STEP2.課題解決に必要なWMSの機能をピックアップする

具体的に何をすれば良いのか、なぜこのステップが必要なのか、1つずつ詳しく見ていきましょう。

1-1.STEP1.自社の課題を洗い出す

まずは、自社の課題を洗い出します。

次のように、現時点で抱えている倉庫の課題をできる限り書き出し、リストを作っておきます。

課題リストの作成例
【入荷作業の課題】
・入荷検品に時間がかかる/ミスが多い
・棚入れした商品のロケーションをエクセルで登録(手入力)するのに時間がかかる
【出荷作業の課題】
・ピッキングミスが多い
・新人スタッフがピッキング時に商品をなかなか見つけられず時間がかかる
・手書きの送り状の記入ミスによる誤出荷/配送遅れが目立つ
【在庫管理作業の課題】
・商品を保管するスペースに無駄が多く、レイアウトをどう改善していいかもわからない
・過剰在庫/欠品が多い
【棚卸作業の課題】
以前は週に1回の循環棚卸を行っていたが、現場負荷が高く定期的に行えなくなっている
【その他】
・人手不足で人力での作業に限界を感じ、物流ロボットの導入を検討している
・在庫商品のABC分析をしたいが、手間がかかるためできない

上の例を参考に、どの行程でどのような課題が生まれているのか、箇条書きでリスト化してみましょう。

【課題リスト作成時のポイント】

・ポイント①とにかくできるだけ多くの課題を書き出す
「この課題がWMSで解決できるかどうか」は後で考えればいいので、ここではあまり深く考えすぎずに、思いつく限りの「現場の課題」を全て出しておきましょう。

・ポイント②現場で働くスタッフからも意見をもらう
現場責任者や経営陣などの上層部だけで意見をまとめず、現場で実際に作業を行っているスタッフからも意見を出してもらいましょう。
(こうすることでより具体的・深刻な課題が浮き彫りになる)

・ポイント③課題の洗い出しが難しい場合は専門家に相談する
「そもそも何が課題かわからない」という場合は、社内の人間だけでWMSの選定を行うのが難しいため、専門家のコンサルティングを受けることをお勧めします。
※詳しくは、以下のページを参考にしてください。

 

 

WMSの導入を決めたということは、あなたの会社は現時点で倉庫業務に何かしらの問題を抱えているはずです。

「何が自社の課題で、WMS導入によってどのような効果を期待しているのか」を具体的に言語化しておくことで、

・製品選びの基準が定まらず、いつまでたっても契約・購入ができない
・必要な機能が不足している・いらない機能がたくさん搭載されている製品を選んでしまう

といった事態の発生を防ぎます。

どんなに性能が良い・評判の高いWMSでも、あなたの会社の課題をピンポイントで解決できなければ意味がありません。

自社の課題の洗い出しは、何を置いても真っ先にやるべき作業だと言えるでしょう。

1-2.STEP2.課題解決に必要なWMSの機能をピックアップする

続いて、課題解決に必要なWMSの機能をピックアップします。

このステップを行うためには、そもそもWMSにどのような機能があるかを知っておかなければなりません。

まずは、WMSの機能として一般的なものを一覧でざっと確認しましょう。

標準機能(どの製品にも原則搭載されているもの)
機能名 期待できる効果
入荷管理 ・入荷作業のミス防止(注文を受けた商品が出荷できないなど)
・入荷作業の時間短縮

【詳細機能の一例】

・入荷予定情報の取り込み
・入荷予定リストの発行
・入荷実績の入力
・ラベル発行
・入荷検品
・格納(ロケーション管理)
在庫管理 ・ピッキングミス/ピッキングの時間ロスの防止
・過剰在庫や欠品を最小限に抑える【詳細機能の一例】
・在庫照会
・ロケーション移動
・在庫調整
・廃棄処理
・補充
・履歴管理
出荷管理 ・出荷作業のミス防止(誤発送など)
・出荷トラブルの防止(出荷依頼を受注したのに倉庫内に商品がないなど)
・出荷作業の時間短縮

【詳細機能の一例】
・在庫引当/作業単位作成

・ピッキングリストの発行
・ピッキング/出荷検品
・梱包入力
棚卸管理 ・棚卸業務のミス防止(カウントミスなど)
・棚卸業務の時間短縮/人員削減
・現物在庫の正しい把握

【詳細機能の一例】
・棚卸指示

・棚卸作業
・棚卸差異リスト
・棚卸結果報告
マスタ管理
※倉庫内のあらゆるデータを整理・統合する機能
・データ集計/データ呼び出しの時間短縮
・現状のオペレーションの問題点/改善ポイントの分析

【詳細機能の一例】
・商品マスタ

・ロケーションマスタ
・取引先マスタ
・倉庫マスタ

 

応用機能(一部の製品にしか搭載されていないもの)
機能名 期待できる効果
KPI管理
※倉庫業務のKPI(コスト・生産性・品質などの中間的な目標)を管理する機能
・現場の現状と課題の「見える化」
・適切な目標の設定
(→作業効率アップ/コスト削減につながる)

【詳細機能の一例】
・倉庫のKPI分析
・作業進捗照会
外部連携
※外部のシステムやソフト・機器とWMSを連携させる機能
・スムーズな情報連携による、受注から出荷までのスピード向上
・マテハン/ロボット連携による、人件費削減/作業員の負担軽減/業務の効率化

【詳細機能の一例】
・基幹システムとの連携

・受注管理システム(OMS)との連携
・マテハン機器・物流ロボットとの連携
EC受注管理
※システムに取り込んだECの受注データを管理する機能
・送り状や納品書の記入ミス防止/作業負担軽減

【詳細機能の一例】
・EC送り状データ出力
・EC納品書出力

その他カスタマイズ 標準機能ではまかなえない、現場の業務に合った自由度の高い操作を可能にする
(イレギュラーな業務が多い現場ほどカスタマイズが必要になる可能性が高い)
・商品のサイズごとに格納ロケーションを変える
・ヒューマンエラー防止のために検品作業を複数回行う
・複数拠点で在庫の振り分けを行う など

これらの機能の中から、「1-1.STEP1.自社の課題を洗い出す」で作成したリストを元に、あなたの会社にとって必要な機能をピックアップしていきます。

【例】課題解決に必要なWMSの機能をピックアップ
入荷作業の課題
・入荷検品に時間がかかる/ミスが多い
→WMSの「入荷管理機能(入荷検品)」で解決!
入荷した商品にバーコードを貼り付け、ハンディターミナルでスキャンすることでWMSに商品の情報が登録できるため、入荷検品の効率化・正確化ができる

・棚入れした商品のロケーションをエクセルで登録(手入力)するのに時間がかかる
→WMSの「入荷管理機能(格納/棚入/ロケーション管理)」で解決!

棚入れ時にハンディターミナルでロケーションをWMSに登録できるため、ロケーションの管理漏れの削減や登録の所要時間削減につながる
出荷作業の課題
・ピッキングミスが多い
→WMSの基本機能「出荷管理機能(ピッキング/出荷検品)」で解決!
誤った商品をスキャンすると音や振動でエラーを知らせてくれる製品もある

・新人スタッフがピッキング時に商品をなかなか見つけられず時間がかかる
→WMSの基本機能「入荷管理機能(格納/棚入/ロケーション管理)」で解決!

棚入れ時にハンディターミナルでロケーションをWMSに登録しているため、「何がどこにあるかわからない」といった問題が発生しない

・手書きの送り状の記入ミスによる誤出荷/配送遅れが目立つ
→WMSの応用機能「EC受注管理機能(送り状データ出力)」で解決!

WMSから出力した送り状のデータを運送会社の送り状発行システムへアップロード/印刷することで、送り状の手書きが不要になる
※送り状発行システムを自社で構築し、外部システムとの連携ができるWMSを導入するという選択肢もある
在庫管理作業の課題
・商品を保管するスペースに無駄が多く、レイアウトをどう改善していいかもわからない
→WMSの基本機能「在庫管理機能」で解決!
WMSで商品の数・ロケーションが正確に管理できるため保管状況の可視化が可能になり、レイアウトの改善案が浮かびやすくなる

・過剰在庫/欠品が多い
→WMSの基本機能「在庫管理機能(在庫照会/在庫調整)」で解決!

倉庫内に「何が」「どこに」「どれだけ」保管されているかをデータで正しく管理し、必要な情報をすぐに呼び出すことができるため、システム在庫と現物在庫の差異が発生しづらい
棚卸作業の課題
・以前は週に1回の循環棚卸を行っていたが、現場負荷が高く定期的に行えなくなっている
→WMSの基本機能「棚卸管理機能(在庫照会/在庫調整)」で解決!
ハンディターミナルで在庫を全てスキャンすれば整合性確認が終わるため、現場の負荷が大きく低減される
その他
・人手不足で人力での作業に限界を感じ、物流ロボットの導入を検討している
→WMSの応用機能「外部連携機能(マテハン/ロボット連携)」で解決!
物流ロボットの運用には正確な商品情報の管理が必須であるため、物流ロボットを導入するならWMSを導入は必須とも言える

・在庫商品のABC分析がしたいが、手間がかかるためできない
→WMSの基本機能「マスタ管理機能」で解決!

在庫商品をランク付けできるマスタを用意することで、優先度が高い品目を重点的に管理できるようになり、ABC分析などが可能になる
※基本機能として搭載されていない製品の場合、カスタマイズが必要なケースもある

・そもそもどこに課題があるかわからない
→WMSの応用機能「KPI管理機能」で解決!
WMSで集めたデータを元に、在庫回転率や従業員ごとの生産性といった指標の数値化・KPI分析ができ、課題の洗い出しと目標設定が行えるようになる

ピックアップ作業が一通り終わったら、

・どうしても外せない機能
・予算の関係次第では除外しても良い機能

を分類して、欲しい機能の優先順位をつけておくとなお良いでしょう。

どの機能をピックアップしたらいいかわからない・判断に迷うといった場合は、各機能のメリットや活用場面などについて詳しく解説した以下の記事をご覧ください。
>>「WMSの機能を網羅解説!機能ごとのメリットや活用場面の例も紹介

WMSになじみのない方にとって、こちらの行程は少々難しく骨の折れる作業です。

しかし、根気強く情報収集して必要機能をピックアップしておくことで、導入後の効果や満足度が大きく変わります。

どうしても判断に迷う・不安な場合は専門家に相談することも視野に入れつつ、しっかりと必要機能のピックアップを行いましょう。

【応用機能を使いたい場合は、早めに専門家に相談するのがお勧め】

・KPI管理
・外部連携
・EC受注管理
・その他カスタマイズ※

といったWMSの応用機能は、自社に合ったもの・問題なく使えるものを選ぶのが非常に困難です。

ベンダーに直接問い合わせて相談した場合、当然ながらベンダーが提供する製品をベースとしたアドバイスが中心になるため、

・よりカスタマイズの柔軟性が高い他社製品を使った方が良い
・フルスクラッチで一から開発した方がいい

といった、「あなたの会社に最も適した選択肢」を提案してもらいづらい傾向にあります。

カスタマイズの可能性が高くWMSの選定に迷うようであれば、社員だけで選定を行わずに、第三者の専門家に相談しに行くことをお勧めします。

物流ITコンサルティングの詳しいサービス内容や事例については、より詳しく解説した以下の記事をご覧ください。

 

 

※オペレーションが特殊な現場の場合、自社に合わせた機能のカスタマイズが必要になるため、標準機能では間に合わないケースが多い

2.失敗しないWMSの選び方【実践編】

WMS 選び方(実践)

準備が整ったら、いよいよWMS選びの実践です。

次の順に、自社に合った製品を徐々に絞り込んでいきましょう。

・STEP3.WMSのタイプを選ぶ
・STEP4.必要な機能を備えたWMSをリストアップする
・STEP5.対象規模・業種・業界がマッチしていないものは候補から外す

1つずつ、詳しいやり方を解説します。

2-1.STEP3.WMSのタイプを選ぶ

まずは、WMSのタイプを選びます。

WMSには、大きく分けて

・SaaS
・パッケージ
・フルスクラッチ

の3つのタイプがあります。

SaaS・パッケージ・フルスクラッチとはどんなもの?
SaaS ・ベンダーが提供するシステムを、月額を支払って利用するタイプ
・すでに用意されている機能を利用するため、基本的にカスタマイズはできない
パッケージ 基本的な物流業務をこなす為の機能が標準搭載されているタイプ

・あらかじめ用意されている標準機能に加え、費用をかければ、自社の業務内容に合わせた機能追加やカスタマイズが可能

フルスクラッチ ・自社専用のシステムを1から開発するタイプ
・ベンダーから製品を購入するのではなく、物流知見と開発力のあるSIerに依頼して開発する

それぞれの特徴を比較すると、以下の表のようになります。

タイプ 導入コスト ランニングコスト 稼働させるまでにかかる期間 カスタマイズの自由度
SaaS
低い
無料~50万円程度

比較的高い
月額5~20万円程度

短い
2~3ヵ月

カスタマイズ不可
パッケージ
比較的高い
カスタマイズ費用がかかる
契約の形態によって異なる
(買い切りタイプであれば低い)

比較的長い
6ヵ月~1年以上

比較的自由
フルスクラッチ
高い
数千万~数億円かかるケースも

比較的高い
自社メンテナンスが必要

長い
1年半以上

フルオーダーできる

タイプごとの特徴を理解したところで、自社にとって最も適したものを選びます。

選び方のポイントは、「予算」と「カスタマイズの自由度」の両方が自社の実態とマッチしているものを選ぶことです。

以下の表を参考に、3種類のタイプのうち「おそらくこのタイプが自社に最も合っている」と思えるものを絞り込んでみましょう。

予算別・お勧めのWMSのタイプ
予算 お勧めのWMSのタイプ
1000万円以下 SaaS

小規模かつ一般的な物流業務をWMSで行いたい場合、標準的な機能だけで運用が回るため、カスタマイズ不要のSaaSで間に合う可能性が高い

【こんな企業にお勧め(一例)】
EC事業でオーダー数が増えてきたため、そろそろエクセル管理から脱却したい中小企業など

3000-5000万円 パッケージ+カスタマイズ

取引先や倉庫に格納する商品の数や多い企業の場合、業務パターンが複雑になる可能性が高いため、カスタマイズできるパッケージの製品が向いている

【こんな企業にお勧め(一例)】
一般的な物流現場では見られない自社特有の業務があり、軽微なカスタマイズを加えたい中堅~準大手企業など

1億円以上 フルスクラッチ

定常的に多くの物量を扱っており、すでに自社オリジナルの物流体制が確立されている大企業の場合、現場に合わせたオーダーメイドのWMSを一から開発した方が良い

【こんな企業にお勧め(一例)】
・取引先に合わせて多様な納品形態・保管形態の対応が必要な大企業
・全国に複数の拠点を持つ大企業など

ここで注意したいのが、「目先のコストの低さだけを重視しすぎない」という点です。

WMSの導入には多額の費用がかかるため、「できるだけ初期費用を抑えたい」と考える企業も少なくはありません。

しかし、初期費用が安いSaaSを導入しても、5年や10年と長く使い続けることでランニングコストがかさむ可能性があります。

さらに、標準機能だけでは間に合わずカスタマイズが必要であった場合、いくら費用が安くても使い勝手が悪いケースもあります。

カスタマイズ性やメンテナンスの負担など、短期的なコスト以外の要素にも広く目を向け、

・自社の特性やビジネス条件に合っているもの
・長期的に総コストが低く抑えられるもの

を選びましょう。

2-2.STEP4.必要な機能を備えたWMSをリストアップする

続いて、必要な機能を備えたWMSをリストアップします。

2-1.STEP3.WMSのタイプを選ぶ」で選んだタイプのWMSのうち、「1-2.STEP2.課題解決に必要なWMSの機能をピックアップする」で挙げた機能を搭載している製品を探してリストアップしておきましょう。

例えば、

・希望の製品タイプ:パッケージ
・必要な機能:標準機能+マテハン・ロボット連携機能

といった場合であれば、世に出回っているWMSのなかから「マテハン・ロボット連携機能を搭載したパッケージタイプのWMS」を探してリストアップします。

自力で一から製品を探すのは大変なので、こちらの作業を行う際は、製品名と搭載機能をタイプ別に一覧にした以下の表を参考にしてください。

【SaaS※】WMS製品の機能一覧
製品名 機能(標準機能+α)
W3 mimosa ・セット品作成
・荷姿変更
・在庫断面
・在庫予測
・消費期限管理
・外部システム連携
・マテハン/ロボット連携
ロジザードZERO ・商品管理(セット品管理・有効期限管理など)
・同梱物管理機能
・セキュリティ対応機能(アクセス元IPアドレス制限など)
・マテハン/ロボット連携
・送り状発行ソフト連携
タナヨミ ・ロット管理/有効期限管理
・自動引き当て
・取り込みCSVマッピング

※表内の製品は、各ベンダーが「SaaS」と明確に謳っているものではありませんが、サービスの内容や性質から、記事内では「SaaS」と分類しています。

【パッケージ】WMS製品の機能一覧
製品名 機能(標準機能+α)
Xble ・検品(バラ/ケース)
・同送品機能(販促品/詫び状の同梱)
・作業進捗管理
・保管荷役料計算
・運送料計算
クラウドトーマス ・賞味期限管理
・セット組管理
・外部システムI連携
・ロット管理
・ケース/バラ管理
W-KEEPER ・拠点間移動
・賞味期限/ロット管理
・セット品管理
・帳票作成(フォーマット自由)
・入出荷追跡
・作業進捗管理
・外部連携(基幹システム/受発注システムなど)
クラウドトーマスPro ・賞味期限/ロット管理
・マテハン/ロボット連携
・複数倉庫の一元在庫管理
・基幹システムとの連携
Air Logi ・ピッキング(トータル/マルチ/TAS)
・マテハン/ロボット/OMS連携
・請求自動化(売上計上/月次締め処理など)
・バッチ/グルーピング
・送り状後出し
ci.Himalayas/R2 ・複数荷主/複数倉庫対応
・荷姿管理(パレット/ケース/ボール/ピース)
・ロケーション管理(フリー/固定)
・上位/下位システム連携
・マテハン連携
・ロット管理
・賞味期限管理(アラート機能付き)
ZIZAIA ・分析管理(入出荷進捗/作業履歴/作業生産性などが照会できる)
・ロット管理
・賞味期限管理
・ロケーション管理(フリー/固定)
・ダブルトランザクション
LIFE-Vision ・出荷期限管理(期限を過ぎたものは警告リスト入り/引当不可にできる)
・ダブルトランザクションによるロケーション管理
・容積計算による物量算出
・ピッキング導線設定
【パッケージ+高いカスタマイズ性】WMS製品の機能一覧
製品名 機能(標準機能+α)
SLIMS ・複数寄託者、複数倉庫の一元管理
・不定貫管理(重量による管理)
・外部システム連携
・AI/ロボット/IoT との連携
COOOLa ・一体型帳票(納品書やピッキングリストなどを1枚にまとめて出力)
・同梱物の管理
・送り状発行
・外部連携(ECカートシステムや基幹システム)
・在庫回転率/KPI/ABC分析
・物流画像検品システム
・出荷予測
ONEsLOGI
「物流センター管理システム」
・複数拠点/荷主の在庫管理
・入出荷作業の進捗管理
・在庫の受払管理
・誤配送防止
Logistics Station

iWMS® G5

・外部連携(上位システム/配送システム/ロボット/マテハン)
・ソース公開オプション(自社もしくはグループ企業でシステムの開発/保守ができるようになる)
・ KLPI分析(従業員別生産性/入出荷遅延/在庫回転率など)
Mr.stream ・外部連携(基幹システム/TMS/マテハン/ロボット/外部倉庫など)
・カメラを使った商品検品/倉庫ナビゲーション
【フルスクラッチの場合は、オーダーメイドで機能を搭載していく】

自社システムを一から開発するフルスクラッチの場合は、SaaSやパッケージのようにベンダーが提供するサービス(製品)を購入するのではなく、SIerに依頼して必要機能を搭載したWMSを開発する形になります。

物流知見と開発力のあるSIerに声をかけ、あなたの会社が望む機能を備えたWMSを構築できるか相談しましょう。

「そもそもフルスクラッチにする必要があるのか」
「フルスクラッチとパッケージ+カスタマイズとで迷っている」

という場合は、自社に合ったWMSのタイプを専門家に相談できる物流ITコンサルティングの利用をおすすめします。

WMSにはさまざまな製品があり、上の表に挙げたものはほんの一部です。

しかし、どれも良質なお勧め製品を厳選したものなので、この中から候補をリストアップしておくと良いでしょう。

【注意点】この段階ではまだ実際に導入する製品を絞らなくても良い

この先の行程でさらに細かい条件でふるいにかけていくので、あくまで候補のリストアップに留めておきましょう。製品ごとの詳しい特徴や費用については、記事の終盤「5.【一覧表で比較】お勧めWMS16選」でご紹介します。

2-3.STEP5.対象規模・業種・業界がマッチしていないものは候補から外す

2-2.STEP5.必要な機能を備えたWMSをリストアップする」で、リストアップした製品のうち、あなたの会社と対象規模・業種・業界がマッチしていないものを候補から外しましょう。

 

対象規模とは?
WMSには、

・小規模の小売事業者向け
・大規模な倉庫事業者向け

など、対象規模を限定している製品があります。

例えば、株式会社関通が開発したクラウド型WMS「トーマス」では、次のように企業の規模に合わせて製品を分けています。

・小中規模の物流現場向け(現場スタッフ数1~15名)
→手軽に導入できるSaaS「クラウドトーマス

・大規模の物流現場向け(現場スタッフ数15名以上)
→柔軟にカスタマイズできるパッケージ「クラウドトーマスPro

対象業種・業界とは?
WMSには、特定の業種/業界に特化した機能を搭載した製品もあります。

【特定の業種・業界に特化した機能があるWMSの例】
・物流業/3PL向けWMS
複数荷主/複数拠点に標準対応できる製品、通過型センター(TC)と在庫型センター(DC)のどちらにも対応できる製品などを選ぶと良い
例:「W-KEEPER

・EC事業向けWMS
ECカートシステムとの連携機能がある製品を選ぶと良い
例:「COOOLa

・食品/アパレル業界向けWMS
賞味消費期限・出荷期限の設定ができる製品、色やサイズを分けて単品管理できる製品を選ぶと良い
例:「ZIZIA

業種や業界によって必要な機能/便利な機能が変わってくるため、特殊な業務が多い業種/業界ほど、自社の特性とマッチした製品を選ぶ必要があります。

世に出回っているWMSのうち、規模や業種を限定していない製品の方が多いため、「製造だから『製造向け』とされているWMSを選ばなければならない」というわけではありません。

ただし、規模感やサービスの方向性があまりにもマッチしていない製品を選んでしまうと、高い費用をかけて導入しても上手く機能しないリスクがあります。

明らかに自社向けではないと思われる製品は、あらかじめ候補から外しておくと良いでしょう。

Q.規模感や対象業種/業界に関する情報が特に掲載されていない製品の場合はどうしたらいい?
A.自社と似た規模感/業種/業界の企業の導入事例がないかをチェックしましょう。製品の紹介ページに対象の規模や業種が明記されていない場合は、「導入事例」などのページを確認して、自社と似た規模感/業種/業界の企業の導入事例があるものを選ぶと良いでしょう。導入事例の情報が見つからなければ、ベンダーに直接問い合わせるのもひとつの方法です。

3.失敗しないWMSの選び方【最終チェック編】

WMS 選び方(最終チェック)

候補をある程度絞ったら、最後は細かい要素のチェックです。

・STEP6.外部システム/周辺機器との連携はできるかをチェックする
・STEP7.STEP8.5~10年先も使える製品かをチェックする
・STEP8.直感的に使いやすいかをチェックする
・STEP9.サポート体制が自社にマッチしているかをチェックする
・STEP10.情報セキュリティ対策は万全かをチェックする

機能面/コスト面で良いと思った製品でも、細かい点を最終チェックしてみると、思わぬ欠点が見つかる可能性があります。

どこを見て何をチェックすればいいのか、詳しく見ていきましょう。

3-1.STEP6.外部システム・周辺機器との連携はできるかをチェックする

すでに外部システムや周辺機器を導入している(または今後導入予定がある)場合は、それらのシステムと候補のWMS製品が連携できるかをチェックしましょう。

【外部システム/周辺機器の一例】

・基幹システム
・販売管理システム
・受注管理システム
・通販モール/ネットショップ
・配送システム
・各種マテハン機器/物流ロボット

外部システムとの連携ができない場合、それぞれのシステムを個別に管理しなければならず、作業効率がかえって悪化する/連携ミスによるトラブル(データのズレによる欠品など)が生じるリスクがあります。

外部連携ができないことによるトラブル例
例1.基幹システムとの連携に失敗し在庫ズレが生じる
それぞれのシステムにおける在庫増減の考え方とIF連携が一致しておらず、在庫がないのにオーダーを受けてしまい、現物欠品が発生するなど

→顧客満足度の低下/クレームに繋がる

例2.物流ロボットとの連携がうまく行かず生産性が下がる
IF連携の頻度やタイミングが業務にマッチしておらず、無駄な待ち時間が発生するなど

→生産性向上のために物流ロボットを導入した意味がなくなってしまう

外部システム/周辺機器との連携をチェックする方法としては、ベンダー(販売元)のWebサイトでこれまでの外部連携実績を確認するのが最も近道です。

豊富な連携実績を持つベンダーであれば、連携事例のないシステムでも応じてくれる可能性があります。

3-2.STEP7.5~10年先も使える製品かをチェックする

続いて、候補に挙げたWMSが、5~10年先も使える製品かをチェックします。

WMSが5~10年先も使える製品かをチェックする方法
1.会社の将来をシミュレーションする
会社全体や現場が5年後/10年後どうなっているかをシミュレーションする
(人員・設備・事業規模など)
2.候補に挙げたWMSが会社の将来にマッチしたものなのかを確認
ここまでのステップで候補に上げたWMSが、想定した5~10年後の会社の変化に耐えうるものなのかをチェック

(例)
標準機能があれば十分かと思ったが、将来マテハンを導入するかもしれない可能性を考えて、連携機能が充実している製品に変更するなど

このステップを踏んでおくことで、将来余計なコストがかかるリスクを軽減できます。

「低コストだから」という理由でSaaSのWMSを導入して一時的に作業効率が上がったとしても、将来カスタマイズが必要になりパッケージやフルスクラッチのWMSに乗り換えた場合、余計な手間と費用がかかってしまいす。

今後、事業規模や業態が変わる可能性が高い会社の場合は、できるだけ多機能/カスタム性の高いWMSを選んでおくと良いでしょう。

3-3.STEP8.直感的に使いやすいかをチェックする

WMSを選ぶ基準として細かい部分で重要なのは、直感的に使いやすいかどうかです。

どんなに必要な機能が十分に揃っているWMSでも、現場で使いこなせないスタッフが多く出た場合、効率悪化やミスを誘発する危険があります。

最悪の場合、業務として定着せず導入を取りやめることになる可能性もあるため、操作性は軽視せず事前にしっかりと確認しておきましょう。

直感的に使いやすいWMSかを見極めるには、実際に操作してみる/人が操作しているところを見るのが一番です。

ベンダーが

体験会/説明会の開催
・操作のデモ動画の公開

といった場を設けていないか、情報収集してみましょう。

直感的に使いやすいかをチェックできるWMS(一例)
【デモ動画を公開しているWMS】
・COOOLa:「動画で分かるWMS
・クラウドトーマス:「トーマス使い方動画

【体験会を開催しているWMS】

ロジザードZERO:「
説明会/相談会/勉強会/デモンストレーション
実際に製品に触って操作できるデモンストレーションのほか、相談会なども開催されている

説明会やデモ動画が見つからない場合は、資料請求や見積もりのタイミングで実際に操作してみたい旨を伝えると良いでしょう。

3-4.STEP9.サポート体制が自社にマッチしているかをチェックする

WMSを初めて導入する企業にとって、「何をどこまでしてくれるのか」といったサポート面は重要な要素です。

サポート体制はベンダーや製品によって異なり、当然サポートが手厚いほど費用は高くなります。

そのため、「サポート範囲」と「費用感」のバランスを考慮して、総合的に満足できるものを選びましょう。

サポート範囲が狭いWMSの場合… サポート範囲が広いWMSの場合…
【サポート内容(一例)】
システムの導入支援

導入後のトラブルシューティングなど、最低限のシンプルなサポート【サポート費用】
安い※初期費用・月額費用に含まれている場合もある
【サポート内容(一例)】
倉庫を視察して現場の課題洗い出し

業務フロー改善の提案

事業計画策定の支援

システムの導入支援

導入後のトラブルシューティングなど、トータルで支援が受けられるような手厚いサポート

【サポート費用】
高い
※別途コンサルティングを受けるような形になるため、高額なサポート費用がかかる可能性が高い
※導入から一定期間を過ぎると相談が有料になるケースも

サポート体制が自社にマッチしているかを確認する方法は、ベンダーに直接問い合わせるのが最も早いです。

手厚いサポート内容を求めるなら、説明会への参加・ベンダーとのやり取りなどを通して、どこまで支援してもらえるのかをしっかり聞いておくと良いでしょう。

Q.サポート体制が整っていないベンダーと契約してしまうとどうなる?
A.以下の例のような導入時・導入後のトラブルや不満に繋がります。

・専門性の低いアドバイスしか受けられない

自社スコープの仕組みしか理解しておらず、物流全般の専門知識を持っていないベンダーの場合、ビジネスの課題を相談しても本質的・具体的な対策を提示してもらえない


・問合せ・トラブルシューティングの対応が遅い
サポートデスクを下請けの企業が担当しており、専門的な問合せをした際にベンダーに繋がるまで時間がかかる

3-5.STEP10.情報セキュリティ対策は万全かをチェックする

最後は、候補に挙げたWMSの情報セキュリティ対策は万全かをチェックします。

情報セキュリティ対策が甘いベンダーや製品を選んでしまった場合、

・取引先や顧客の情報漏えいのリスク
・サイバー攻撃によりシステムがダウンするリスク

といったリスクがあるため、必ずチェックしておきましょう。

情報セキュリティ対策が万全かを確認するうえで、指標として最もわかりやすいのが、以下の2つです。

・プライバシーマーク:個人情報の適切な取り扱いを行っていることを示す認証(国内規格)
・ISO認証:情報セキュリティを確保する仕組みを構築・運用できていることを証明する認証(国際規格)

これらの認証を受けている場合、製品のWebサイトの上部や下部に記載があるため、簡単に確認することができます。

WMS プライバシーマーク・ISO記載例参照:「Air Logi」「クラウドトーマス

もちろん、これらの認証を受けているからといって、情報セキュリティ対策が万全であるとは言い切れません。

どうしても不安があるという場合は、ベンダーに直接情報セキュリティ対策への取り組みを問い合せると良いでしょう。

Q.情報セキュリティ対策を万全にしたいならオンプレミス型のWMSを選ぶのが正解?
A.必ずしも「オンプレミス型WMS=安全性が高い」「クラウド型WMS=安全性が低い」というわけではありません。自社サーバーに情報を置くオンプレミス型のWMSは、自社のセキュリティレベルに合わせてシステム構築ができます。対して、外部サーバーを借りるクラウド型は、ベンダー側のセキュリティレベルに依存します。こういった特性から、「情報セキュリティ対策の主導権を自社で握れる」という意味ではオンプレミス型にアドバンテージがありますが、近年ではセキュリティ強化に注力しているクラウドサービスも増加傾向にあります。以上のことから、「オンプレミス型WMS=安全性が高い」「クラウド型WMS=安全性が低い」と断定せずに、フラットな視点で製品を選ぶことをお勧めします。

以上で、失敗しないWMSの選び方10ステップは終了です。

ここまで候補を絞ったら、後はベンダーに問い合わせ・見積もりを取り、導入までの話を詰めていきましょう。

4.WMSを慎重に選ばなければいけない2つの理由

WMS 慎重に選ぶ理由

ここまで紹介してきた「失敗しないWMSの選び方10ステップ」を読んで、

「思ったより行程が多く、実践するのを躊躇してしまう」
「WMSを選ぶのに、本当にここまで慎重にならなければいけないのか?」

と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

WMSを慎重に選ばなければいけない理由には、次のようなものがあります。

・導入にコストがかかるから
・一度導入すると他のシステムへの変更が簡単ではないから

納得感を持って10のステップを実践できるよう、上の2つの理由についてしっかりと理解しておきましょう。

※10のステップを実践することに疑問や不満を感じていない場合は、本章をスキップして次章「5.【一覧表で比較】お勧めWMS16選」に進んでいただいて問題ありません。

4-1.導入にコストがかかるから

WMSを慎重に選ばなければいけない最大の理由とも言えるのが、「導入にコストがかかるから」です。

WMSの導入には、簡易的なサービスでも数十万円、カスタマイズした場合は数千万円~数億円といった導入コストがかかります。

自社に合った製品を選べなかった場合、これだけの費用をかけても現場の状況が改善されないという最悪のパターンも起こり得ます。

WMSの選び方に失敗して導入コストが無駄になる失敗例
・初期費用20万円でSaaSのWMSを導入したはいいが、「使いづらい」という理由で現場のスタッフが従来の業務フローのまま仕事をする。5万円の月額費用を1年間払い続けたが、現場の状況の改善が見られず契約解除

→初期費用20万円+1年間の利用料60万円=80万円のコストが全て無駄に
(あらかじめ操作性を吟味しておけば、これらの損失は防げた)

・初期費用500万円で導入したものの、WMSと既存システムとの連携がうまくいかず、それぞれのシステムを管理する手間がかかりかえって効率が悪化した

→別のWMSに乗り換える場合、元のWMS導入にかけたコスト500万円は全て無駄になってしまう
(外部連携機能についてしっかり確認しておけば、これらの失敗は防げた)

個人の買い物でも、家や車など高額のものを買う時ほど「この金額を払う価値がある商品なのか」と慎重になるものです。

高額なWMSの導入コストに見合う効果を得るためには、製品選びを慎重に行うべきだと言えるでしょう。

4-2.一度導入すると他のシステムへの変更が簡単ではないから

「一度導入すると他のシステムへの変更が簡単ではないから」というのも、WMSを慎重に選ばなければいけない大きな理由の1つです。

WMSを導入する際、契約から稼働させるまでに次のような期間がかかります。

WMSの契約~稼働させるまでにかかる期間の目安
WMSのタイプ 期間
SaaS 2~3ヵ月
パッケージ カスタマイズ無しor少ない場合:6ヵ月~1年
カスタマイズが多い場合:1年以上
フルスクラッチ 1年半以上

上記の期間の中で、

・製品の選定
・ベンダーに問合せ
・ヒアリング
・現地調査
・契約
・要件定義
・システム構築
・テスト稼働
・運用開始
※製品に合わせたマニュアル作成やスタッフへの教育も別途必要

などの行程を経て、ようやくWMSを稼働させることができます。

これだけの時間と労力をかけて、いざ稼働してみたら満足の行く製品ではないことが判明した場合、簡単に別の製品へ乗り換えることはできません。

以上のことから、WMSの導入は「とりあえず導入してみて上手く機能しなければ他のものに乗り換え」といったスタンスで臨むべきではないことがご理解いただけたのではないでしょうか。

確実に、スムーズに課題解決に向かえるよう、WMSは慎重に選びましょう。

5.【一覧表で比較】お勧めWMS16選

WMS お勧め

最後に、お勧めWMS16選を一覧表で比較したものを紹介します。

製品ごとの特徴を比較しながら選びたい方は、ぜひご活用ください。

製品名 初期費用
(税込)
維持費用
(月額・税込)
特徴
SaaS
W3 mimosa 22万円~ 4万1,250円~ ・初心者向けの優しいUI
・無料デモアカウントを発行して体験利用ができる
ロジザードZERO 要問合せ 要問合せ ・最短1ヵ月で導入が可能
・サポート体制が手厚い(サポートデスク365日稼働を20年以上維持している)
タナヨミ 16万1,700円~ 6万2,150円~ 標準化カスタマイズ(他社がカスタマイズ新機能として使用できる(だから費用を抑えられる)
パッケージ
Xble 44万円~ 2万2,000円~ ・ハンディターミナルの購入/レンタルが不要(スマートフォンで操作)
・完全従量課金制
クラウドトーマス 22万円~ 9万9,000円~ ・さまざまな業種/業態の導入実績あり
業種:製造/卸/物流/ECなど
業態:toC/toB
・スタッフ目安1~15名の、小規模現場向け
W-KEEPER 要問合せ 要問合せ 豊富な標準機能と選べるオプション機能で、業種/業態問わず利用できる汎用性の高さが特長
クラウドトーマスPro 要問合せ 16万5,000円~ ・独自APIの公開により上流、下流システムとの連携が容易
・食品/アパレル/医療など業界に特化した機能が追加できる
Air Logi 3万8,500円
※導入支援は別途有料
1万1,000円~ EC物流に強く、自社OMS経由でモール/カートとのAPI連携実績多数
ci.Himalayas/R2 34万200円 2万1,600円~ 情報セキュリティ対策に力を入れている(ISO-27001の取得/耐災害性に強いデータセンターの設置・バックアップ用に別サーバーを設けているなど)
ZIZAIA 要問合せ 要問合せ 標準機能そのものをカスタマイズできる「可変型スタンダード機能」により、カスタマイズ費用を最小限に抑えられる
LIFE-Vision 要問合せ 要問合せ 生活用品を取り扱うドラッグストア/ホームセンター/ディスカウントストア向けのWMS
パッケージ+高いカスタマイズ性
SLIMS 44万円~ 5万4,780円~ リアルタイムの進捗管理/マネジメントに必要な運営管理機能が充実しており、商品分析や作業効率の向上を目指したい現場にお勧め
COOOLa 要問合せ 要問合せ ・標準機能が豊富でカスタマイズの費用や工数が削減しやすい
・無料デモ体験ができる(予約制)
ONEsLOGI
「物流センター管理システム
要問合せ 要問合せ 複数の倉庫拠点・複数荷主を有する、中~大規模物流センター向けのWMS
Logistics Station iWMS® G5 要問合せ 要問合せ マテハン/ロボットやその他個別ソリューションとの連携実績が豊富で、自社に合った省人化のやり方を相談できる
Mr.stream 要問合せ 要問合せ 大規模な物流センターの立て直し実績が豊富

6.WMS選びに迷ったら、Rally Growth株式会社の「物流ITコンサルタント」にご相談ください!

自社の倉庫管理に問題を抱えていて、

「WMSを導入したいが、自社にマッチする製品がどれかわからない」
「カスタマイズ性の高いオンプレミス型を検討しているが、コストが高いので失敗したくない」

といったお悩みをお持ちであれば、物流ITコンサルティングサービスを手掛ける「Rally Growth」にご相談ください。

Rally Growthとは?
2021年に創立した、ミドルマーケットを中心としたDX化/新規事業構築支援を行う、ビジネスコンサルティングファームです。
代表の園田を中心に物流業界に知見のあるメンバーが集まっており、主に物流DXに関連する案件を中心に、複数の企業を支援しています。
Rally Growthの強み
強みその1.多数のWMS導入支援実績

Rally Growthでは、これまで多数の企業にWMS導入支援を行ってきました。
導入のハードルが比較的低いクラウド型はもちろん、オンプレミス型でのカスタマイズや、一から開発するフルスクラッチのシステム構築支援を行った事例もあります。
貴社にとって本当に必要な製品はどれか、選定・提案させていただきます。

強みその2.豊富な知識に基づいた広い視点での企画・提案ができる

これまで物流の改善企画を数多く支援してきた経験から、

・一般的な物流の仕組み
・物流現場の実情
・物流システム
・マテハン

など、物流業界の幅広い知識を持っているのは、Rally Growthの大きな強みです。
「課題が多岐にわたっていて、何から手をつけて良いかわからない」という場合でも、広い視点での企画・提案ができます。

WMSの選定を含む、お客様の支援事例
【プロジェクト概要】
・業態:製造小売
・取扱製品:アパレル
・従業員数:約35,000人
・導入目的:基幹システム/マテハン/WMSを連携させ、超省人化を実現させる

【プロジェクト背景】
6階建ての延床面積約10万㎡という巨大な専用物流倉庫を建設した同社は、マテリアルハンドリングメーカーと手を組み、RFID(無線自動識別)や自動倉庫、自動搬送機などを取り入れたプロジェクトを発足しました。


【支援内容】
弊社も当プロジェクトに参画し、主に以下3つの支援をさせていただきました。
・新倉庫の構想策定
・マテハンの選定
・WMSの選定
最適なベンダーを探すべく、ベンダー選定に先立って多種多様なマテハンを活用したオペレーションの設計を行っていましたが、既存のクラウド製品ではマテハンとの連携はもちろん、同社の基幹システムとの連携も難しかったため、オンプレミス型かつフルスクラッチでのシステム構築に踏み切りました。結果として大規模な物流倉庫の立ち上げに成功し、今では日本最大級の省人化倉庫として日々稼働しています。
>>Rally Growthの支援事例をさらに詳しく見る

WMSの導入にはコストがかかり、カスタマイズが必要なオンプレミス型の場合は特に、導入コストが数千万~数億円にのぼる可能性もあります。

多額の予算を割いてWMSを導入しても、機能を思うように使いこなせなければ、倉庫業務の改善に十分な効果を発揮させられません。

「WMSを導入すると決めたが、実際に契約するとなると候補を1つに絞れない」
「絶対に失敗したくない」

と考えている方こそ、まずはお気軽にお問い合わせください。
>>Rally Growth株式会社|物流ITコンサルティングお問い合わせフォーム

7.まとめ

最後に、本記事の重要ポイントをおさらいします。

▼失敗しないWMSの選び方10ステップ

【準備編】
・STEP1.自社の課題を洗い出す
・STEP2.課題解決に必要なWMSの機能をピックアップする

【実践編】
・STEP3.WMSのタイプを選ぶ
・STEP4.必要な機能を備えたWMSをリストアップする
・STEP5.対象規模・業種・業界がマッチしていないものは候補から外す

【最終チェック編】
・STEP6.外部システム・周辺機器との連携はできるかをチェックする
・STEP7.STEP8.5~10年先も使える製品かをチェックする
・STEP8.直感的に使いやすいかをチェックする
・STEP9.サポート体制が整っているかをチェックする
・STEP10.情報セキュリティ対策は万全かをチェックする
→WMSの導入には手間もコストもかかり、一度導入すると他のシステムへの変更が簡単ではないため、慎重に選ぶ

▼【一覧表で比較】お勧めWMS16選

【SaaS
W3 mimosa
ロジザードZERO
タナヨミ

【パッケージ】
Xble
クラウドトーマス
W-KEEPER
クラウドトーマスPro
Air Logi
ci.Himalayas/R2
ZIZAIA
LIFE-Vision

【パッケージ+高いカスタマイズ性】
SLIMS
COOOLa
ONEsLOGI「物流センター管理システム
Logistics Station iWMS® G5
Mr.stream

本記事の内容が、貴社のWMS選びの手引になれば幸いです。

この記事を書いた人
安孫子悠介

安孫子悠介

Rally Note編集長 &Rally Growth株式会社 取締役。 専門はBtoB営業とマーケティング。KPI設計を含めた営業戦略・営業現場改善や、コンテンツマーケ、CRM、サイトUX改善などデジタルに強み。

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