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パッケージ型WMSとは?特徴を他タイプの製品と比較しながら解説

カテゴリー:logistics
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パッケージ型 WMS

「パッケージタイプのWMSを導入を検討しているが、これが自社にとっての正解なのか、今ひとつ確信が持てない」
「パッケージのWMSがどのようなものなのか、他タイプのWMSとの違いも併せて知りたい」

WMSの導入にあたり、このような疑問・不安をお持ちの担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

一言で申し上げると、パッケージ型WMSとは「倉庫管理に必要な基本機能が既に開発されてパッケージ化されたソフトウェア」です。

パッケージ型WMSとは?
倉庫管理に必要な基本機能(入出荷管理や在庫管理など)が既に開発されてパッケージ化されたソフトウェア
パッケージ型 基本性能
機能 標準機能(入荷管理・在庫管理・出荷管理・棚卸管理)
+
自社の業務に合わせたカスタマイズ
費用相場 3,000~5,000万円
導入にかかる期間 6カ月~1年以上
メリット ・一からシステム構築するよりも安価・短期間で導入できる
・カスタマイズ性の高い製品を選べばセミオーダーのシステムを開発できる
デメリット ・自社に合う製品を選ぶのが難しい
・カスタマイズを加えるほど導入費用が高くなる
こんな企業にお勧め ・一般的なWMSの機能に加えて、軽微なカスタマイズを加えたい企業
・中堅~準大手規模の企業

パッケージ型WMSは上記のような特徴を持つことから、

「一からシステム構築するほどの予算がない」
「業務のパターンや保管形態などに一部特殊なものがあり、カスタム不可の標準機能では間に合わない」

といった企業にとってお勧めのタイプであると言えますが、全ての企業にとってベストな選択とは言えません。

そこで本記事では、

・パッケージ型WMSとはどのようなものか
・パッケージ型WMSの機能
・パッケージ型WMSの費用
・パッケージ型WMSのメリット・デメリット
・パッケージ型WMSの導入がお勧めの企業・お勧めしない企業

といった情報を、どこよりもわかりやすく具体的に解説します。

最後まで読めば、あなたの会社にとってパッケージ型WMSがベストな選択かどうかが判断でき、迷わず導入に踏み切れるようになることでしょう。

【記事監修】園田真之介

物流 コンサルタント
Rally Growth株式会社 代表取締役社長。株式会社FrameworxでSEとしてキャリアを形成後、株式会社BayCurrent Consultingを経て現職。専門は物流・ロジスティクス×IT領域。過去に大手アパレルの物流・倉庫最適化や大手自動車メーカーの物流システム刷新の案件をコンサルタントとして多数経験。2021年グロービス経営大学院卒(MBA)

1.パッケージ型WMSとは

パッケージ型 WMS

まずは、パッケージ型WMSとはどのようなものなのかについて、次の順にお話しします。

・パッケージ型WMSとは、倉庫管理に必要な基本機能が既に開発されてパッケージ化されたソフトウェアのこと
・他タイプのWMSとの違い

これからWMSを導入するにあたり、パッケージ型WMSそのものの定義や特徴を事前にしっかりと把握しておきましょう。

1-1.パッケージ型WMSとは、倉庫管理に必要な基本機能が既に開発されてパッケージ化されたソフトウェアのこと

パッケージ型WMSとは、数あるWMS製品のうち、倉庫管理に必要な基本機能が既に開発されてパッケージ化されたソフトウェアのことを指します。

・入荷管理
・在庫管理
・出荷管理
・棚卸管理

といった、倉庫管理業務をこなすために必要な機能があらかじめパッケージ化されており、導入後は自社の業務内容に合わせて機能の追加やカスタマイズをして利用するのが一般的です。

【パッケージ型WMSの導入~稼働までのイメージ】

パッケージ版 WMS

また、一口に「パッケージ型WMS」と言っても

・標準搭載されている機能
・カスタマイズ性の高さ
・提供形態(クラウド型・オンプレミス型など)

といった特性は製品ごとに異なるため、これ以上詳細な定義を提示するのは困難です。
そのため、ここではパッケージ型WMSを「パッケージ化された標準機能にカスタマイズを加えて利用するWMS」と認識しておくと良いでしょう。

【注意】「パッケージ型WMS」の定義について

WMSのタイプ分類は非常に曖昧であり、絶対的かつ明確な定義付けは存在しないというのが実情です。
Web上では、パッケージ型WMSを「ソフトをインストールする買い切りタイプのWMS」と定義付けている情報メディアもあります。
本記事では、買い切りタイプ・月額タイプといった料金体系は限定せず、「基本的な機能のセット+カスタマイズができる製品」をパッケージ型と呼んでいます。

以上のことを前提に、この先の内容をお読みいただけると幸いです。

1-2.他タイプのWMSとの違い

WMSには、大きく分けて

・SaaS型
・パッケージ型
・フルスクラッチ型

の3つのタイプがあり、パッケージ型WMSとその他の2タイプの違いは以下の表のとおりです。

WMSの3タイプ
SaaS型 ・ベンダーが提供するシステムを、月額を支払って利用するタイプ
・すでに用意されている機能を利用するため、基本的にカスタマイズはできない
パッケージ型 ・基本的な機能がパッケージ化されているタイプ
・あらかじめ用意されている標準機能に加え、自社の業務内容に合わせて機能をカスタマイズできる
フルスクラッチ型 ・自社専用のシステムを1から開発する、フルオーダータイプ
・ベンダーから製品を購入するのではなく、物流知見と開発力のあるSIerに依頼して開発する

機能や型が決まっておりカスタマイズができないSaaS型・自社専用のシステムを1から開発するフルスクラッチ型に対して、パッケージ型WMSは両者の中間のような位置づけのWMSです。

【パッケージ型WMSの位置づけ】

・パッケージ化されている機能にカスタマイズを加えられるため、SaaS型よりも自由度が高いが、フルスクラッチ型と比べると低い
・基本的な機能がすでにパッケージ化されているため、フルスクラッチ型よりも導入のハードルが低いが、SaaS型と比べると高い

もう少し詳細に三者を比較するために、それぞれのタイプの特徴を一覧表で見てみましょう。

【WMSのタイプ別特徴一覧表】

WMSのタイプ 導入コスト ランニングコスト 稼働させるまでにかかる期間 カスタマイズの自由度 企業規模イメージ
SaaS型
低い
無料~50万円程度

比較的高い
月額5~20万円程度

短い
2~3カ月

低い
原則カスタマイズ不可
中小企業
パッケージ型
比較的高い
3千万~5千万かかるケースも

契約形態によって異なる

比較的長い
6カ月~1年以上

比較的高い
製品によって異なる
中堅~大企業
フルスクラッチ型
高い
数千万~数億円かかるケースも

比較的高い
自社メンテナンスが必要

長い
1年半以上

高い
フルオーダーできる
大企業

 

上の表を見ても分かるとおり、WMSの

・導入コスト
・稼働させるまでにかかる期間
・カスタマイズの自由度
・利用する企業の規模

は、SaaS型・パッケージ型・フルスクラッチ型の順に大きくなるとイメージしておくと良いでしょう。
以上が、パッケージ型WMSと他タイプのWMSとの違いです。

2.パッケージ型WMSの機能

パッケージ型WMS 機能

続いては、パッケージ型WMSの機能についてご紹介します。
パッケージ型WMSの機能は、

・標準機能(カスタマイズ可)
・その他応用機能

といった2つの要素で構成されているのが一般的であり、これこそがパッケージ型WMSならではの機能の特徴と言えます。

それぞれどのような機能があるのか、具体的に見ていきましょう。

2-1.標準機能(カスタマイズ可)

パッケージ型に限らず、「バーコードやハンディターミナルなどを使って、入荷〜出荷までの『倉庫の物の流れ』をデジタル化する」というのがWMSの標準機能です。

【WMSの標準機能の全体像イメージ】

WMS機能 全体像

WMSの標準機能は

・入荷管理
・在庫管理
・出荷管理
・棚卸管理

の4つで構成されているのが一般的であり、それぞれの詳細な機能は以下の表のとおりです。

WMSの標準機能
入荷管理 入荷時の商品情報を管理し、入荷作業のミス防止や時間短縮を図る機能

【詳細機能の一例】
・入荷予定情報の取り込み
・入荷予定リストの発行
・入荷実績の入力
・ラベル発行
・入荷検品
・格納(ロケーション管理)

在庫管理 在庫のリアルタイムな状況をデータで管理しピッキングミス・ピッキング時間のロス・過剰在庫・欠品などを防止する機能

【詳細機能の一例】
・在庫照会
・ロケーション移動
・在庫調整
・廃棄処理
・補充
・履歴管理

出荷管理 出荷時の商品情報を管理し、誤発送・出荷依頼の受注ミス・出荷作業の時間のロスなどを防止する機能

【詳細機能の一例】
・在庫引当/作業単位作成
・ピッキングリストの発行
・ピッキング/出荷検品
・梱包入力

棚卸管理 現物在庫の正しい情報をデータで管理し、棚卸業務のミス防止・時間短縮を図る機能

【詳細機能の一例】
・棚卸指示
・棚卸作業
・棚卸差異リスト
・棚卸結果報告

※WMSの機能については、以下の記事で詳しく解説しています。適宜ご参照ください。
WMSの機能を網羅解説!機能ごとのメリットや活用場面の例も紹介

ここまでご説明した標準機能はどのタイプのWMSにも搭載されるものですが、標準機能を自社の業務内容に合わせてカスタマイズできるという点が、パッケージ型WMSならではの特徴です。

具体的にどのようなカスタマイズができるのか、例を見てみましょう。

パッケージ型WMSの標準機能のカスタマイズ例
入荷管理機能 入荷元のASNデータを連携させ、検品レスで在庫計上できるようにする
→入荷時の作業時間が短縮
出荷管理機能 入荷した箱単位での出荷指示が発生した際、箱をそのままピッキングラベルとして有効活用したピッキングリストが出力されるようにする
→ピッキングの作業効率が向上
在庫管理機能 賞味期限管理している在庫の残日数に応じてアラートを表示する
→期限切れによる在庫の廃棄を防ぐ

このように、パッケージ型WMSは現場のオペレーションに合わせた細かいカスタマイズが標準機能に追加できます。

2-2.その他応用機能

パッケージ型WMSでは、前述した標準機能に加え、

・マテハン・ロボットとの連携
・その他外部システムとの連携
・データを活用した分析

といった応用的な機能を追加することも可能です。
上記のような応用機能を追加するとどのようなことが可能になるのか、現場にどのような変化が起きるのか、詳しく見てみましょう。

WMSの応用機能
マテハン・ロボットとの連携
WMSで取得・蓄積した倉庫内のデータを使って、マテハンや物流ロボットを稼働させる機能。
これまで人の手で行っていた入出荷・ピッキング・仕分けなどの作業を機械とテクノロジーによって代替することで、大幅な省人可・省力化が実現する

【マテハン・ロボット連携のイメージ】ロボット連携 イメージ

その他外部システムとの連携
すでに導入しているシステム・これから導入予定のシステムとWMSを連携させ、倉庫内の情報拠点としてWMSを置くことで、倉庫業務がスムーズになる

【システムとの連携イメージ】

システム連携 イメージ

データを活用した分析
WMSで取得・蓄積されたデータを活用して、倉庫業務の課題の発見やさらなる業務効率化を実現する

【データを活用した分析の一例】
・ABC分析
倉庫内の商品を出荷数・コスト・在庫数といった指標でランク付けして分類する
→売れ筋商品の把握や適正な在庫管理に役立つ

・KPI分析
WMSに集めたデータを元に人時生産性(従業員1人が1時間働く際の生産性)・在庫回転率・作業コスト・ミスの発生率といった指標を数値化する
→倉庫業の課題が明らかになり、具体的な目標設定ができるようになる

・AIによるデータ分析
WMSで取得・蓄積したデータを活用して、AIが現場の状況に合わせた最適な作業指示を出す(現場の状況に合わせた在庫の置き場所・人の配置・導線・作業プロセスなど)
→現場の人間が頭を悩ませることなく、常に最適化された倉庫を保てる

パッケージ型WMSでは、標準機能のカスタマイズだけではなく、このような応用機能を自社の業務内容や解決したい課題に合わせて追加することもできます。

3.パッケージ型WMSの費用

パッケージ型WMS 費用

パッケージ型WMSの費用は、イニシャルコスト・ランニングコストを合わせて3,000~5,000万円程度が相場とされています。

なぜこれほどの予算が必要なのか、導入・利用にかかる費用内訳は以下のとおりです。

パッケージ型WMSの導入・利用にかかる費用の内訳
イニシャルコスト ランニングコスト
開発費用
※カスタマイズ開発工数に応じて費用も変動する
アプリケーション保守費用
インフラ構築費用
・ライセンス費用
・環境構築費用
・サーバー/ミドルウェア購入(オンプレミス型の場合)
ライセンス利用料
インフラ保守費用(オンプレミス型の場合)
クラウド利用料(クラウド型の場合)

カスタマイズの内容やどのベンダーを選ぶかによって費用は大きく前後するため、具体的な費用は実際に見積もりを取るまではわかりません。

3,000~5,000万円という金額は、あくまでひとつの目安として捉えておくと良いでしょう。

4.パッケージ型WMSのメリット・デメリット

パッケージ型WMS メリデメ

ここからは、パッケージ型WMSのメリット・デメリットについて解説します。

パッケージ型WMSのメリット パッケージ型WMSのデメリット
・SaaS型と比べてカスタマイズの自由度が高い
・フルスクラッチ型と比べて安価・短期間で導入できる
・フルスクラッチ型と比べて自由度が低い
・SaaS型と比べて導入時の費用・時間がかかりやすい

他のタイプのWMSよりも優れている面・劣っている面をフラットに比較していきますので、「パッケージWMSの導入が本当に自社にとってベストな選択なのか」を考えながら読み進めていきましょう。

4-1.パッケージ型WMSのメリット

パッケージ型WMSの代表的なメリットは、次の2つです。

パッケージ型WMSのメリット
・SaaS型と比べてカスタマイズの自由度が高い
・フルスクラッチ型と比べて安価・短期間で導入できる

標準機能にカスタマイズを加えて使用するのが一般的なパッケージ型WMSは、SaaS型・フルスクラッチ型のWMSと比べて

・カスタマイズの自由度
・コスト
・導入までの期間

のバランスが良いという特長があります。
このため、パッケージ型WMSは

「カスタマイズなしの標準機能では間に合わないが、1からシステム開発するほどの予算がない」

といった状況に最適なWMSと言えるでしょう。
反対に、

「使える機能が制限されたり、多少使いにくくても良いから、とにかく低コストにこだわりたい!」
「既成の機能は一切使わず、完全オリジナルのシステムを構築したい!」

といった場合は、パッケージ型WMSメリットである「自由度・コスト・期間のバランスの良さ」を最大化できない可能性が高いため注意が必要です。

4-2.パッケージ型WMSのデメリット

パッケージ型WMSの主なデメリットは、以下の2点です。

パッケージ型WMSのデメリット
・フルスクラッチ型と比べて自由度が低い
・SaaS型と比べて導入時の費用・時間がかかりやすい

標準機能にカスタマイズを加えることである程度の自由度は担保されているものの、フルオーダーで一から開発できるフルスクラッチ型と比べるとやや制限されます。
さらに、導入費用の相場が無料~50万円程度のSaaS型と比べるとコストが高くなりやすいというのも、パッケージ型WMSのデメリットとも言えるでしょう。

ただし、導入したWMSがうまく稼働すれば長期的には人件費などのコストカットに繋がるため、「最終的な費用対効果が高いのはこのタイプ」とは一概には言えません。

このように、パッケージ型WMSに限らず、どのタイプのWMSも企業の重視する要素によってはメリット・デメリットが発生します。
ここでは、全ての企業にとってパッケージ型WMSを導入するのがベストな選択とは限らないと認識しておきましょう。

5.【成功事例付き】パッケージ型WMSの導入がお勧めな企業・お勧めしない企業

WMS 成功事例

続いては、パッケージ型WMSの導入がお勧めな企業・お勧めしない企業について解説します。

パッケージ型WMSの導入がお勧めな企業 パッケージ型WMSの導入をお勧めしない企業
・一定の物量があり、業務パターンがやや複雑な中堅企業
・取引先数が多く、多様な納品形態・保管形態の対応が必要な企業
・システム開発に数億円単位のコスト、1年以上の開発期間を割くことができない企業
・小規模で一般的な物流業務が中心な中小企業
・標準的な機能があれば十分な企業
・定常的に多くの物量を扱っており、戦略的な物流体制の構築が必要な大企業
・特殊な業務が多く、自社の業務に合わせたシステムを1から構築したい企業

これまでお伝えしてきたとおり、パッケージ型WMSには他タイプのWMSと比較して良い面も悪い面もあるため、全ての企業においてパッケージ型WMSの導入がベストな選択とは限りません。
具体的にはどのような企業にお勧めなのか、導入成功事例をふまえて解説しますので、

「自社にとってパッケージ型WMSがベストなのか」
「お勧めしない企業に該当した場合、どのタイプのWMSが最適なのか」

といった疑問を一つずつ解消していきましょう。

5-1.パッケージ型WMSの導入がお勧めな企業

以下の3つの特徴に1つでも当てはまるものがある企業は、パッケージ型WMSの導入をお勧めします。

パッケージ型WMSの導入がお勧めな企業の特徴
・一定の物量があり、業務パターンがやや複雑な中堅企業※/・取引先数が多く、多様な納品形態・保管形態の対応が必要な企業

→カスタマイズ不可のSaaS型WMSでは対応できない

 

・システム開発に数億円単位のコスト、1年以上の開発期間を割くことができない企業

フルスクラッチ型WMSでは予算オーバー・人的リソースが足りない可能性が高い

※自社の業務パターンや保管形態にカスタマイズが必要か不要かわからない場合は、「2.パッケージ型WMSの機能」を参考に判断されることをお勧めします。

取引先や倉庫に保管する商品の数が多い企業の場合、業務パターンが複雑になる可能性が高いため、ある程度カスタマイズが可能なWMSを選ぶ必要があります。

また、資金や人的リソースが潤沢にある大手企業でなければフルスクラッチ型で一からシステム開発するのは現実的ではないため、そのような企業の場合は自然とパッケージ型WMSが最適なタイプとなります。

さらに注意したいのが、上記の3つの特徴全てを満たしている必要はないという点です。
例えば、取り扱う商品の量や事業規模が小さくても現場のオペレーションが特殊で既存の標準機能では間に合わない場合は、SaaS型よりも小規模事業者向けのパッケージ型WMSを探してみることをお勧めします。

具体的にどのような企業がパッケージ型WMSの導入に成功しているのか、事例を見てみましょう。

事例1.荷主企業のシステムからパッケージ型WMSへリプレイス
パッケージ化された標準機能+軽微なカスタマイズでスピーディーな開発に成功

【企業概要】

業種:3PL・運輸業
取り扱い商品:食品
従業員数:70名程度

【パッケージ型WMS導入の背景】

これまでは荷主企業のシステムを利用していたが、機能面で融通が利かない部分があり使いづらさや不満を感じていた。新規荷主との取引開始をきっかけに、WMSのリプレイスを決定。

【WMS導入の効果】

新規荷主取引開始の日程が迫っていたため、できるだけ早く稼働させられるベンダーを選定。標準機能が充実したパッケージ型WMSに軽微なカスタマイズを加えたことで、スピーディーな導入に成功無事予定通りのタイミングで稼働させることができた。

 

事例2.自社開発のWMSからパッケージ型WMSへリプレイス
正確な分析データの取得・蓄積に成功

【企業概要】

業種:卸売・製造・EC事業
取り扱い商品:オフィス用品など
従業員数:150名程度

【パッケージ型WMS導入の背景】

海外に向けたEC事業を手掛けており、現地で開発したWMSを利用していたが、事業規模拡大に伴い現行のシステムでは機能面で耐えられないと判断し、WMSのリプレイスを決定した。

【WMS導入の効果】

既存の標準機能を自社の業務に合わせてカスタマイズし運用したところ、業務の標準化による生産性の向上だけではなく、兼ねてから課題としていた分析データの網羅性が担保され分析の幅が広がった。

このように、「カスタマイズなしの標準機能では間に合わないが、1からシステム開発するほどの予算・時間がない」といった企業には、パッケージ型WMSの導入をお勧めします。

5-2.パッケージ型WMSの導入をお勧めしない企業

パッケージ型WMSの導入をお勧めしない企業の特徴は、次のとおりです。

パッケージ型WMSの導入をお勧めしない企業の特徴
・小規模で一般的な物流業務が中心な中小企業/・標準的な機能があれば十分な企業

→カスタマイズ不要なSaaS型WMSで間に合う可能性が高い

 

・定常的に多くの物量を扱っており、戦略的な物流体制の構築が必要な大企業/・特殊な業務が多く、自社の業務に合わせたシステムを1から構築したい企業

→フルスクラッチ型でなければ間に合わない可能性が高い

これらの特徴に当てはまるものがあれば、パッケージ型以外のWMS製品を選んだ方が良い可能性があります。

どのような企業であればSaaS型・フルスクラッチ型を選んだ方が良いのか、イメージの参考として、それぞれの導入成功事例を見てみましょう。

【SaaS型WMS導入成功事例】
自社開発システムからSaaS型WMSへリプレイス・最小限の機能でコスト削減に成功

【企業概要】

業種:倉庫業
取り扱い商品:化学工業品、飲料ほか
従業員数:20名程度

【WMS導入の背景】

自社開発のシステムを利用していたが、操作性やシステム保守人員の人件費がネックとなり、システムのリプレイスを検討。コスト圧縮が課題であったこと、特殊な業務は発生しないことから、必要最小限のシンプルな機能を搭載したSaaS型WMSを導入した。

【WMS導入の効果】

あらかじめ搭載されている機能の範囲で問題なく運用することができ、システム運用費や人件費の圧縮に成功大幅なコスト削減となった。

 

【フルスクラッチ型WMS導入成功事例】
大規模な物流倉庫の管理にフルスクラッチ型のWMSを導入・超省人化大型倉庫の稼働に成功

【企業概要】

業種:製造小売業
取り扱い商品:アパレル
従業員数:3万5,000名程度

【WMS導入の背景】

大型物流倉庫の建設に伴い、省人化を実現するために各種システムやマテハン・物流ロボットと連携できるWMSの導入を検討していた。

【WMS導入の効果】

既存のWMSでは基幹システムとの連携や複雑なオペレーションに対応させるのが難しく、フルスクラッチでのシステム構築に踏み切る。大規模な物流倉庫の立ち上げと省人化に成功した。

このように、パッケージ型以外のWMSを選んだ結果、一定の成果が出ているといった企業も数多く存在します。

ここまでの内容を読んで、

「パッケージ型のWMSを導入するつもりでいたが、もしかしたら他のタイプの方が良いかもしれないと思いはじめた」
「結局どのタイプを選べばいいのかわからない」

と判断に迷う場合は、企業規模と予算別にお勧めのWMSのタイプを一覧にした以下の表を参考にしてください。

【企業規模・予算別】お勧めのWMSのタイプ
企業規模・予算イメージ お勧めのWMSのタイプ
中小企業
予算:1000万円以下
SaaS型

小規模かつ一般的な物流業務をWMSで行いたい場合、標準的な機能だけで運用が回るため、カスタマイズ不要のSaaSで間に合う可能性が高い

【こんな企業にお勧め(一例)】
EC事業でオーダー数が増えてきたため、そろそろエクセル管理から脱却したい中小企業など

中堅~大手企業
予算:3,000-5,000万円
パッケージ+カスタマイズ型

取引先や倉庫に格納する商品の数や多い企業の場合、業務パターンが複雑になる可能性が高いため、カスタマイズできるパッケージの製品が向いている

【こんな企業にお勧め(一例)】
一般的な物流現場では見られない自社特有の業務があり、軽微なカスタマイズを加えたい中堅~準大手企業など

大企業
予算:1億円以上
フルスクラッチ型

定常的に多くの物量を扱っており、すでに自社オリジナルの物流体制が確立されている大企業の場合、現場に合わせたオーダーメイドのWMSを一から開発した方が良い

【こんな企業にお勧め(一例)】
・取引先に合わせて多様な納品形態・保管形態の対応が必要な大企業
・全国に複数の拠点を持つ大企業など

 

6.パッケージ型WMSの選び方

WMS 選び方

ここまでの内容を読んで「パッケージ型WMSを導入する」と決めた場合は、以下の4ステップで自社に合った製品を選びましょう。

パッケージ型WMSの選び方4ステップ
STEP1.自社の課題解決に必要な機能を洗い出す
・現時点で自社が抱えている課題を洗い出し、課題解決のために必要なWMSの機能をピックアップする

・この工程を経ることで、カスタマイズや機能追加がどの程度必要なのか、あらかじめ図ることができる

 

【課題と必要な機能の洗い出し例】
・出荷時のピッキングミスが多い
→WMSの標準機能「出荷管理機能(ピッキング/出荷検品)」で解決できる
※ただし、ピッキング作業時に特殊なオペレーションがある場合はカスタマイズが必要になる可能性あり
・本当は週に一度循環棚卸しを行いたいが、現場負荷が高く定期的に行うことができないでいる
→WMSの標準機能「棚卸管理機能(在庫照会・在庫調整)」で解決!
・人手不足で人力での作業に限界を感じ、物流ロボットの導入を検討している
→パッケージの標準機能に加えて、「マテハン・ロボット連携機能」を追加する必要がある
・人件費の削減や作業時間の短縮をしたいが、やそもそもどこに課題があるのかわからない
→パッケージの標準機能に加えて、「データを活用した分析機能」を追加する必要がある

STEP2.欲しい機能が搭載できるパッケージ型WMSをリストアップする
・STEP1.でピックアップした機能が搭載できるベンダーを探し、そのベンダーが提供しているパッケージ型の製品をリストアップする
・費用や使い勝手を比較できるよう、候補を複数挙げておくと良い※具体的なベンダーや製品名については、「7.お勧めパッケージ型WMS13選」で詳しく紹介しています
STEP3.製品の提供形態を選ぶ
パッケージ型WMSには、オンプレミス型・クラウド型の2種類の提供形態があるため、自社に合った方を選択する

【オンプレミス型とは?】
・自社サーバーを用意してシステムを運用するタイプ
・初期費用が高く構築期間が長い傾向にあり、定期的なメンテナンスも必要
・社内ネットワークを使用したい企業にお勧め

【クラウド型とは?】
・インターネット上のサーバーにデータを置いて利用するタイプ
・導入コストが安く、インターネット環境さえあれば即導入が可能
・初期費用を抑えたい企業にお勧め

STEP4.見積もりを取って候補を絞り、導入する製品を決める
ある程度候補が絞れたら、複数のベンダーに見積もりを取り、ベストな製品を選定する

【比較ポイント】
・コストは予算の範囲内か
・自社の求めるカスタマイズに対応してもらえるか
※外部連携を希望する場合は、指定のシステムや機器と連携できるかも確認しておく
・直感的に使いやすいか
・サポートは充実しているか
・情報セキュリティ対策は万全か

※さらに具体的・実践的な選び方を知りたい場合は、WMS全般の選び方について10のステップで解説した以下の記事をご覧ください。
>>「WMSの選び方はこれに従うだけ!失敗しない究極の10ステップ

パッケージ型に限らず、WMSを導入するうえで最も重要かつ難しいのが、製品選びです。

WMSには数多くの製品があり、費用・カスタマイズの自由度・得意とする分野といった特徴はベンダーによって実にさまざまであるため、自社にとってベストな製品を迷わず見つけるには専門的な知識が必要になります。

さらに、

・導入にはコストがかかる
・一度導入すると他のシステムへの変更が簡単ではない

といった性質上、製品選びに失敗しないよう慎重に選ばなければなりません。
WMSの選定に迷うようであれば、社員だけで選定を行わず「物流ITコンサルティング」等のサービスを利用し、第三者の専門家に相談しに行くことをお勧めします。

※物流ITコンサルティングの詳しいサービス内容や事例については、より詳しく解説した以下の記事をご覧ください。

 

 

7.お勧めパッケージ型WMS13選

WMS おすすめ

最後は、お勧めのパッケージ型WMSを13種類ご紹介します。
前章「6.パッケージ型WMSの選び方」の内容を元に、製品ごとの特徴を比較しながら、自社に合ったものを選定しましょう

製品名 初期費用
(税込)
維持費用
(月額・税込)
特徴
カスタマイズ性が低い~普通程度のパッケージ型WMS
クラウドトーマス 22万円~ 9万9,000円~ ・さまざまな業種・業態の導入実績あり
業種:製造・卸・物流・ECなど
業態:toC・toB
・スタッフ目安1~15名の、小規模現場向け
W-KEEPER 要問合せ 要問合せ 豊富な標準機能と選べるオプション機能で、業種・業態問わず利用できる汎用性の高さが特長
クラウドトーマスPro 要問合せ 16万5,000円~ ・独自APIの公開により上流、下流システムとの連携が容易
・食品・アパレル・医療など業界に特化した機能が追加できる
・現場スタッフ数16名以上の中~大規模物流現場向け
Air Logi 3万8,500円

※導入支援は別途有料

1万1,000円~ EC物流に強く、自社OMS経由でモール・カートとのAPI連携実績多数
ci.Himalayas/R2 34万200円 2万1,600円~ 情報セキュリティ対策に力を入れている
(ISO-27001の取得・耐災害性に強いデータセンターの設置・バックアップ用に別サーバーを設けているなど)
ZIZAIA 要問合せ 要問合せ 標準機能そのものをカスタマイズできる「可変型スタンダード機能」により、カスタマイズ費用を最小限に抑えられる
LIFE-Vision 要問合せ 要問合せ 生活用品を取り扱うドラッグストア・ホームセンター・ディスカウントストア向けのWMS
カスタマイズ性が高いパッケージ型WMS
SLIMS 44万円~ 5万4,780円~ リアルタイムの進捗管理・マネジメントに必要な運営管理機能が充実しており、商品分析や作業効率の向上を目指したい現場にお勧め
COOOLa 要問合せ 要問合せ ・標準機能が豊富でカスタマイズの費用や工数が削減しやすい
・無料デモ体験ができる(予約制)
ONEsLOGI

「物流センター管理システム

要問合せ 要問合せ 複数の倉庫拠点・複数荷主を有する、中~大規模物流センター向けのWMS
Logistics Station iWMS® G5 要問合せ 要問合せ マテハン・ロボットやその他個別ソリューションとの連携実績が豊富で、自社に合った省人化の施策を相談できる
Mr.stream 要問合せ 要問合せ 大規模な物流センターの立て直し実績が豊富
inter stock 要問合せ 要問合せ ・導入時の追加カスタマイズが無料(一部規定あり)
・ユーザーと専属パートナーが共同で開発を行う「内製化支援サービス」により、専門家のサポートを受けながらユーザーが主導権を握ってカスタマイズできる

ただし、WMSの導入には一定の専門知識を要するため、社内の人間だけで選定するのは難しいケースも多いというのが実情です。

少しでも判断に迷う場合は、どのようなWMSを選べば良いか、事前に専門家(物流ITコンサルタントなど)へ相談してみると良いでしょう。

8.製品選びに迷ったらプロに相談を!Rally Growthの「物流ITコンサルタント」にお任せください

Rally Growth株式会社

自社の倉庫管理に問題を抱えていて、

「WMSを導入したいが、自社にマッチする製品がどれかわからない」
「コストが高いので、製品選びで失敗したくない」

といったお悩みをお持ちであれば、物流ITコンサルティングサービスを手掛ける「Rally Growth」にご相談ください。

Rally Growthとは?
2021年に創立した、ミドルマーケットを中心としたDX化/新規事業構築支援を行う、ビジネスコンサルティングファームです。

代表の園田を中心に物流業界に知見のあるメンバーが集まっており、主に物流DXに関連する案件を中心に、複数の企業を支援しています。

Rally Growthの強み

強みその1.多数のWMS導入支援実績

Rally Growthでは、これまで多数の企業にWMS導入支援を行ってきました。
導入のハードルが比較的低いSaaS型やパッケージ型WMSだけではなく、一から開発するフルスクラッチのシステム構築支援を行った事例もあります。
貴社にとって本当に必要な製品はどれか、選定・提案させていただきます。

強みその2.豊富な知識に基づいた広い視点での企画・提案ができる

これまで物流の改善企画を数多く支援してきた経験から、

・一般的な物流の仕組み
・物流現場の実情
・物流システム
・マテハン

など、物流業界の幅広い知識を持っているのは、Rally Growthの大きな強みです。
「課題が多岐にわたっていて、何から手をつけて良いかわからない」という場合でも、広い視点での企画・提案ができます。

WMSの選定を含む、お客様の支援事例
【プロジェクト概要】

・業態:製造小売
・取扱製品:アパレル
・従業員数:約35,000人
・導入目的:基幹システム・マテハン・WMSを連携させ、超省人化を実現させる

【プロジェクト背景】

6階建ての延床面積約10万㎡という巨大な専用物流倉庫を建設した同社は、マテリアルハンドリングメーカーと手を組み、RFID(無線自動識別)や自動倉庫、自動搬送機などを取り入れたプロジェクトを発足しました。

【支援内容】

弊社も当プロジェクトに参画し、主に以下3つの支援をさせていただきました。
・新倉庫の構想策定
・マテハンの選定
・WMSの選定最適なベンダーを探すべく、ベンダー選定に先立って多種多様なマテハンを活用したオペレーションの設計を行っていましたが、既存のクラウド製品ではマテハンとの連携はもちろん、同社の基幹システムとの連携も難しかったため、オンプレミス型かつフルスクラッチでのシステム構築に踏み切りました。結果として大規模な物流倉庫の立ち上げに成功し、今では日本最大級の省人化倉庫として日々稼働しています。
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WMSの導入にはコストがかかり、カスタマイズが必要なオンプレミス型の場合は特に、導入コストが数千万~数億円にのぼる可能性もあります。
多額の予算を割いてWMSを導入しても、機能を思うように使いこなせなければ、倉庫業務の改善に十分な効果を発揮させられません。

「WMSを導入すると決めたが、実際に契約するとなると候補を1つに絞れない」
「絶対に失敗したくない」

と考えている方こそ、まずはお気軽にお問い合わせください。

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ご支援の全体像や具体的なご支援プランを掲載していますので、物流を中心としたDX支援のサービスをご検討の方はぜひご一読ください。

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9.まとめ

最後に、本記事の重要ポイントをおさらいします。

▼パッケージ型WMSとは

・倉庫管理に必要な基本機能(入出荷管理や在庫管理など)が既に開発されてパッケージ化されたソフトウェアのこと

【他タイプのWMSとの違い】
・SaaS型WMSとの違い:既存の標準機能をカスタマイズできる
・フルスクラッチ型WMSとの違い:1からシステムを構築するのではなく、固定の機能にカスタマイズを加えるセミオーダー型

▼パッケージ型WMSの機能

【標準機能】

・入荷管理
・在庫管理
・出荷管理
・棚卸管理
→現場のオペレーションに合わせた細かいカスタマイズができる

【応用機能】

・マテハン・ロボットとの連携
・その他外部システムとの連携
・データを活用した分析
→自社の業務内容や解決したい課題に合わせて追加できる

▼パッケージ型WMSのメリット・デメリット

【メリット】

・SaaS型と比べてカスタマイズの自由度が高い
・フルスクラッチ型と比べて安価・短期間で導入できる

【デメリット】

・フルスクラッチ型と比べて自由度が低い
・SaaS型と比べて導入時の費用・時間がかかりやすい
→「カスタマイズなしの標準機能では間に合わないが、1からシステム開発するほどの予算がない中堅企業」に最適なWMSと言える

▼お勧めパッケージ型WMS13選

【カスタマイズ性が低い~普通程度のパッケージ型WMS】

クラウドトーマス
W-KEEPER
クラウドトーマスPro
Air Logi
ci.Himalayas/R2
ZIZAIA
LIFE-Vision

【カスタマイズ性が高いパッケージ型WMS】

SLIMS
COOOLa
ONEsLOGI「物流センター管理システム
Logistics Station iWMS® G5
Mr.stream
inter stock
→ベンダーの選定に迷う場合は専門家に相談するのがお勧め

本記事の内容が、貴社のWMS選びの参考になりましたら幸いです。

この記事を書いた人
安孫子悠介

安孫子悠介

Rally Note編集長 &Rally Growth株式会社 取締役。 専門はBtoB営業とマーケティング。KPI設計を含めた営業戦略・営業現場改善や、コンテンツマーケ、CRM、サイトUX改善などデジタルに強み。

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