WMS×マテハンで倉庫改善!倉庫運用を劇的に変える3つの連携案

「新しいマテハンを導入しようと考えているが、既存システムとの連携が難しい可能性が高い。WMSを導入するべきか?」
「WMSはすでに導入済みだが、最新のマテハンとの互換性があるかわからない」
「そもそもWMSとマテハンは連携させなければならないのか?どのように連携させれば良いのか?」
業務上、自社倉庫の運用にWMSとマテハンに関する知識が必要になった際、このような疑問をお持ちになる企業様は多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、マテハンを導入して倉庫業務を高度化させるには、WMSとの連携が必須です。
上の図を見て分かるとおり、厳密にはマテハン機器とWMSが直接連携するのではなくマテハンの動きを制御するシステム「WCS」とWMSを連携させる必要があるため、WMSのみを導入すれば良いというわけではありません。
さらに、導入したいマテハンの種類や求める連携のレベルによっては、その他のシステムとの連携も必要になる場合があります。
これから新たにマテハンを導入し倉庫業務を改善したいと考えている企業様は、以下の行動を取りましょう。
マテハン×WMSで倉庫業務を改善したい企業が取るべき行動 |
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本記事では、WMSとマテハンを活用して倉庫業務を改善したい企業様に向けて、以下の情報をわかりやすく解説します。
・WMS、マテハン、その他関連システムの役割と関係性
・WMSとマテハンを連携するメリット、デメリット
・WMSとマテハンを活用した倉庫の改善案(難易度別3タイプ)
・自社に最適なWMSとマテハンの連携を実現するための4ステップ
貴社にとっての倉庫の理想像が明確になり、具体的な実装に向けて動き出せるようになる情報を順番にお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
【記事監修】園田真之介
Rally Growth株式会社 代表取締役社長。株式会社FrameworxでSEとしてキャリアを形成後、株式会社BayCurrent Consultingを経て現職。専門は物流・ロジスティクス×IT領域。過去に大手アパレルの物流・倉庫最適化や大手自動車メーカーの物流システム刷新の案件をコンサルタントとして多数経験。2021年グロービス経営大学院卒(MBA)
目次
1.ここを押さえずに次へは進めない!WMS・マテハン・その他関連システムの役割と関係性
まずは、WMS・マテハン・その他関連システムの役割と関係性について、以下の順に解説します。
・WMSとは
・マテハンとは
・WCSとは
・WESとは
WMSとマテハンを活用した倉庫運用について知るためには、前提知識として「WMSとは何か」「マテハンとは何か」を正しく把握しておかなければなりません。
さらに、実現しようとしている自動化のレベルによってはWCS・WESといったその他のシステムを導入しなければならないケースもあるため、それぞれの役割と関係性を一つずつ理解していきましょう。
1-1.WMSとは
WMSとは、「Warehouse Management System(倉庫管理システム)」の略称で、倉庫内の物の流れをデータで集約・管理し最適化するシステムのことを指します。
WMSとは? | |
![]() |
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役割 | さまざまな外部システム・機器と連携できる「情報拠点」
商品が倉庫内に入荷されてから出荷するまでの「何が・どこに・どれだけ・どのような状態であるのか」をリアルタイムで管理し、倉庫業務の最適化を図る |
主な機能 | 入荷管理機能
仕入先や工場など、外部から倉庫へ入ってくる物を管理する |
在庫管理機能
在庫のリアルタイムな情報を管理する |
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出荷管理機能
取引先や顧客から注文を受けた商品が正しく出荷・納品が行われているかを管理する |
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棚卸管理機能
在庫のカウントやシステム在庫と現物在庫の差異調整を効率化する |
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マスタ管理機能
複数のシステムに散在するさまざまな情報を「マスタデータ」として種類別に整理統合する |
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導入するメリット | 1.人為的ミスを削減できる
目視・手書き・手入力の作業を自動化することで検品ミス・ピッキングミス・送付先住所の記載ミスなどを防止・削減できる |
2.作業を効率化できる
手作業を自動化することで検品・棚入れ・ピッキング・ラベル出力・棚卸し・商品の運搬などの業務効率が上がる |
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3.業務が標準化され属人化を解消できる
ハンディターミナルを軸とした明確なマニュアルが確立され、新人スタッフからベテランスタッフまで一定の水準で作業ができる |
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4.倉庫の保管効率が上がる
フリーロケーションでの保管が可能になり、限られたスペースを有効活用できる |
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5.在庫状況がリアルタイムで把握できる
実在庫とシステム在庫の差異によって発生する欠品や過剰在庫などのトラブルを防止できる |
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6.さまざまな外部システム・機器と情報連携できる
WCS・WES・TMS・マテハン・ロボット・AIなど、倉庫内のあらゆる情報を繋ぐ拠点になる |
入荷から出荷まで、「何が・どこに・どれだけ・どのような状態で倉庫にあるか」をデータ化し、その情報をバーコード+ハンディターミナルなどで管理します。
WMSがどのようなものなのかを理解するうえで最も重要なのが、
「倉庫内のさまざまなシステム・機器を繋ぐ情報拠点となること」
です。
WMSで取得・蓄積した倉庫内のデータによって、その他システムやマテハンへの高度な指示出しが可能になります。
上の図を見て分かるとおり、倉庫内のあらゆるシステムや機器を連携して稼働させるには、WMSというハブになる存在が不可欠です。
具体的な連携の方法などについては記事の後半でお伝えしますので、本章では「WMSは倉庫のさまざまなシステム・機器を繋ぐ情報拠点」ということを認識しておきましょう。
WMSの機能や導入のメリットについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
1-2.マテハンとは
マテハンとは「マテリアルハンドリング」の略称で、物の移動や仕分けなどの作業そのものを指す言葉です。
しかし、今日の物流業界においては物流業務の省人化・品質向上を促進する「マテハン機器」のことを指して「マテハン」と呼ぶのが一般的であり、本記事でもそのように定義しています。
マテハンと呼ばれる機器の定義は非常に幅広く、古くから倉庫現場で使われているコンベヤやフォークリフトから最新の物流ロボットまで、すべて「マテハン」に該当します。
倉庫内で使われる代表的なマテハンの例 | ||
従来型マテハン | ||
![]() →シンプルな操作でシステムとの連携が不要 |
||
次世代型マテハン | ||
![]() →複雑・高度な機能を持ちシステムと連携して稼働させる |
人が操縦するフォークリフトやスイッチ一つで操作できるコンベヤなど、人の手で操作が完結できるマテハンはシステムとの連携を必要とせず、そのまま倉庫内で稼働させることが可能です
しかし次世代型マテハン(自動化レベルの高いマテハン)を倉庫内で稼働させるには、WMSをはじめとするシステムとの連携が必要になります。
貴社がこれから新たに導入しようとしているマテハンが次世代型マテハンに該当する場合は、WMS・WCS(場合によってはWES)の導入・連携も併せて考えなければならないため、本記事で周辺システムの知識を収集しておくと良いでしょう。
1-3.WCSとは
WCSとは、「Warehouse control system(倉庫制御システム)」の略称で、倉庫内の機器をリアルタイムに制御するシステムのことを指します。
WCSとは? | |
※WCSには、個別のマテハンを制御する「小さなWCS」と、それらを束ねて統合制御する「大きなWCS」の2つのレイヤーが存在する |
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役割 | マテハンを自動で動かす制御システム
「どのマテハンを・いつ・どう動かすか」を制御し、倉庫業務の最適化を図る |
主な機能 | 個別のマテハンの制御(個別WCS)
システムからマテハンへ指示を出し、運搬・積付け・積み下ろしなどの作業を行う |
複数のマテハンの統合制御(統合WCS)
個別のマテハン同士を連携させ、動作速度やタイミングを最適なものに調整する |
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導入するメリット | 1.業務の自動化・機械化により生産性が大幅に向上する
搬送・仕分け・入出庫などそれまで人の手で行っていた業務を機械化することで、作業スピードが著しく向上する |
2.人手不足を解消できる
システムから指示を出してマテハンを動かすため、1日の入出荷に必要な人員を削減できる |
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3.人為的ミス・トラブルを低減できる
人がマテハンを直接操作・操縦しなくても済むことにより、誤操作や事故のリスクが低減する |
WCSの主な役割は、倉庫内のマテハンを「いつ・どこで・どう動かすか」をコントロールすることです。
例えば、フォークリフトを有人操作からAGF(無人フォークリフト)へ切り替える場合、WCSが「どの荷物を・どこへ・どのタイミングで運ぶか」をAGFに指示する必要があります。
このように、自動化レベルの高いマテハンを倉庫内で使うには、WCSの導入・連携が必須です。
具体的にどのようなマテハンがWCSとの連携が必要か、例を見てみましょう。
WCSとの連携が必要なマテハン・不要なマテハン(一例) | |||
必要 | 不要 | ||
自動化レベルの高い「次世代型マテハン」
例)
→WCSから指示を送り、遠隔で操作・操縦する |
操作がシンプルな「従来型マテハン」
例)
→操作が単純かつ人手依存であるため、システムと連携させず単独で稼働できる |
WCSと次世代型マテハンを導入・連携し、これまで人が行っていた作業を自動化することで、生産性の向上や人手不足の解消につながります。
ただし、WCSからマテハンにどのような指示を出すかは、上位システム(WMS・WES)や人の頭で出力する必要があります。
詳しくは、4.WMSとマテハンを活用した倉庫の改善案【難易度別に3タイプ】でお伝えしますが、ここでは「WCSを導入しただけでは『倉庫の完全自動化・無人化』は実現できない」ということを留意しておきましょう。
なお、WMSとWCSの違いと関係性については以下の記事で詳しく解説していますので、もう少し深く知りたいという場合は是非ご覧ください。
【コラム】統合WCS/WES 上記「1-3.WCSとは」ではマテハンの統合制御システムについて「統合WCS」と表現しましたが、先進企業を中心にこの「統合WCS」の統合制御機能を「WES(倉庫運用管理システム)」に担わせるシステム構成が主流になりつつあります(2025年時点)。 ※WESについては次章で解説しています 単体のマテハン導入であればWESの導入までは不要なケースが多いですが、大規模倉庫で複数のマテハンを組み合わせて運用するケースなどではWESの導入が推奨されます。 「WCS」や「WES」の言葉の定義や期待する効果イメージが、企業や倉庫の規模、取り扱うベンダーなどによって曖昧で異なることが多いので、そのイメージをすり合わせてコミュニケーションをとることも重要です。 |
1-4.WESとは
WESとは、「Warehouse Execution System(倉庫運用管理システム)」の略称で、人・マテハン・システムのデータを学習・分析し、倉庫運用を統合的に最適化するシステムです。
【注意点】 今日の物流業界では、基本的にWMS・WCS・マテハンの三者を連携させた倉庫運用が一般的であり、WESの導入までは実施していない企業の方が多いです。 WESは「すでにWMS・WCSを用いた倉庫運用をしており、さらに高度なDXを推進したい」といったタイミングで導入するのが最適であるため、以下の内容はあくまで将来を見据えた倉庫運用の参考としてご覧ください。 |
WESとは? | |
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役割 | WMS・WCSによる倉庫運用をさらに高度化させる
AIのようにデータ学習・分析・シミュレーションができるため、「今何をどう動かせば良いか」の判断・指示出しといった高度な業務がシステムで代替できるようになる |
主な機能 | 倉庫内の人・マテハン・システムの統合管理・制御 |
導入するメリット | 1.現場全体のパフォーマンスが底上げされる
倉庫内の人・マテハン・システムの動きをリアルタイムに調整し最適化することで、人間による倉庫運用では実現しえなかった効率化・生産性の向上が期待できる |
2.「倉庫の完全自動化(無人化)」の実現が目指せる
システムから指示を出してマテハンを動かすため、1日の入出荷に必要な人員を削減できる |
WESは、WMS・マテハン・WCSを連携させた倉庫運用をさらに高度化(省人化)するシステムです。
蓄積されたデータを学習・分析し、「今、このマテハン(人)をこう動かすと最も効率が良い」といった指示を出すなど、非常に高度な用途で活用できます。
WMS・WCSがある程度人間の判断を必要とするシステムであるのに対し、WESは「自らデータを学習し、答えを導き出すAIのようなもの」と考えるとイメージしやすいでしょう。
2.【結論】マテハンを導入して倉庫業務を高度化させるにはWMSとの連携が必須
もしあなたの会社がマテハン導入による業務の高度化を進めようとしているのであれば、WMSの導入・連携が基本的には必須だと考えておくと良いでしょう。
なぜなら、人手を最小限に抑えマテハンを稼働させるには、WMSに蓄積した情報が必要になるためです。
一体どういうことか、詳しく見ていきましょう。
WMSでは上位システムの指示に基づく作業単位が作成されるため、それによって現場へ作業の優先順位や単位を意識した指示を出すことができます。
マテハンには作業指示情報がないため、WMSの情報を連携しない場合マテハンの制御システムで都度SKUやオリコンの指定を行わなければならず、必要以上に手間がかかります。
特に自動倉庫などの場合は、出荷指示を全て手打ちしなければならないため、WMSとの連携なくしては使い物にならないと言っても過言ではないでしょう。
以上のことから、マテハンを導入して倉庫業務を高度化させるにはWMSとの連携が必須だと言えます。
【注意点:「WMSさえ導入すればOK」ではない】 マテハンを活用した倉庫業務の高度化にはWMSの存在が不可欠ですが、以下のようなWMS以外のシステムを導入しなければならないケースもあります。 ・マテハンを動かすためのWCS(自動倉庫・AGV等の遠隔で動かすマテハンを導入する場合は必要) ・WMS・WCSによる倉庫運用をさらに高度化させるWES(最先端の倉庫DXを目指す場合は必要) 詳しくは、4.WMSとマテハンを活用した倉庫の改善案【難易度別に3タイプ】でお伝えします。 |
3.WMSとマテハンを連携するメリット・デメリット
続いては、WMSとマテハンを連携するメリットとデメリットについて解説します。
WMSとマテハンを連携するメリット・デメリット | |||
メリット | デメリット | ||
→人手不足の解消
→荷主・顧客の満足度が向上 |
|
ここまでの記事の内容を読んで
「結局、WMSとマテハンを連携させると何が良いのかよくわからない」
「リスクが大きいようなら今のままの設備・オペレーションでも良いのかもしれない」
と感じた企業様は、WMSとマテハンの連携によって貴社が何を得られるのか、また何を失うリスクがあるのかをしっかりと整理して「自社にとって必要か不要か」をご検討ください。
3-1.WMSとマテハンを連携するメリット
WMSとマテハンを連携することで得られるメリットは、主に以下の2つです。
WMSとマテハンを連携するメリット |
作業の効率が向上する
人の手で行っていた業務を自動化することで、作業スピードが著しく向上し、人手不足の解消につながる |
作業の精度が向上する
ピッキングミスやそれに伴う誤出荷・棚卸の計算ミスなど、人の目や手ではどうしてもゼロにできない人為的ミスが自動化によって削減できる。荷主・顧客の満足度の向上につながる |
WMSで作成した作業単位を元にマテハンへ指示出しすることで
・商品の搬送
・仕分け
・ピッキング
・フォークリフトの操縦
など、これまで人間の手で行っていた業務が自動化され、スピーディーかつ正確な倉庫運用が可能になります。
これにより、多くの倉庫現場が抱える
・入出荷件数の増加による人手不足
・ヒューマンエラーによる荷主・顧客からのクレーム
といった課題を解決できます。
具体的には、WMSとマテハンの連携によって倉庫現場がどのように改善されるのか、以下の事例をご覧ください。
WMSとマテハンの連携により作業の効率・精度が向上した事例 | |
【企業概要】
業種:商社・メーカー 従業員数:150名程度(倉庫の作業員は15名) 【WMSとマテハン連携の背景】 機械部品を取り扱うA社は、自社の物流センターを新設するにあたり、20台のAGV(無人搬送車)とWMSを導入するというDX推進に踏み切ることとなった。 基幹システムから受け取ったデータを元にWMSから「この棚をこのエリアまで持ってきてほしい」といった指示を送り、AGVが指定棚を指定のエリアまで自動で搬送する運用が実現した。 【効果】
→現在ではわずか15名の人員で運用しており、将来的には25%の人員削減を目指している |
このように、WMSからマテハンへの高度な指示出しが可能になることで、省人化の推進や顧客満足度の向上につながります。
3-2.WMSとマテハンを連携するデメリット
WMSとマテハンを連携するデメリットは、主に以下の2つです。
WMSとマテハンを連携するデメリット | ||
膨大なコストと手間がかかる
【WMSとマテハンの連携にかかる費用・期間の例】
※統合WCSの場合。個別WCSはマテハンベンダー側が提供しているケースがほとんど |
||
システム障害等で業務が停止する恐れがある
システムに不具合が生じた場合、大きな損失が出るリスクがある 倉庫業務がシステムに大きく依存することになり、万が一システム障害等の不具合が発生して設備が稼働しなくなった場合、すべての作業を停止しなければならないなどの大きな被害が出る可能性もある |
多くの企業がDXによって倉庫運用を改善したいと考えている一方で、コスト面での不安や課題を抱えています。
WMSをはじめとしたシステム導入には具体的にどのくらいの費用と時間がかかるのか、以下の表をご覧ください。
WMSの導入費用相場 | ||||
タイプ※1 | 5年間利用した総コストの相場※2 | イニシャルコスト | ランニングコスト | |
SaaS型 | 1,300万円~ | 100万円~
【内訳】
|
月額20万円~
【内訳】
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|
パッケージ型 | 6,000万円~ | 数千万円~
【内訳】
|
開発費の10%程度 + 年間300万円~【内訳】
|
|
スクラッチ型 | 1億3,000万円~ | 数千万~数億円
【内訳】
※開発規模によって大きく変動する |
開発費の10%程度 + 年間500万円~【内訳】
|
|
WCSの導入費用相場 | ||||
タイプ | 5年間利用した総コストの相場 | イニシャルコスト | ランニングコスト | |
スクラッチ型 | 5,000万円~ | 数千万~数億円
【内訳】
|
開発費の10%程度/年
【内訳】
|
※1:WMSには大きく分けて3つのタイプがあります(WCSは基本的にスクラッチ型のみ)
SaaS型:ベンダーが提供するシステムを月額を支払って利用するタイプ。中小企業向け
パッケージ型:基本的な機能がパッケージ化されているタイプ。中堅~大企業向け
スクラッチ型:自社専用のシステムを1から開発するフルオーダータイプ。大企業向け
※2:予算イメージの目安として、導入後5年程度稼働させた場合のトータルでかかるコストの概算を記載しています
※3:WCSは統合WCSの場合。個別WCSはマテハンベンダー側が提供しているケースがほとんど
WMSの導入にかかる期間の目安 | |
タイプ | 稼働させるまでにかかる期間 |
SaaS型 | 2~3ヵ月 |
パッケージ型 | 6ヵ月~1年以上 |
スクラッチ型 | 1年半以上 |
WCSの導入にかかる期間の目安 | |
タイプ | 稼働させるまでにかかる期間 |
SaaS型 | 1年~1年半程度 |
上の表で提示した費用・期間はあくまで一般的な目安であり、
・倉庫の規模
・導入するマテハンの種類や数
・連携の複雑さ
といった要因によっては、より多くのお金と時間がかかる可能性もあります。
ここで気になってくるのが
「導入費用に見合った効果はあるのか?」
という点ですが、
・コスト削減を目的にWMSとマテハンを連携させようと思っている
・WMSとマテハンを存分に活用する時期が限られている(繁忙期と通常時とで業務量に大きな差があるなど)
といった企業にとっては十分な費用対効果が得られず、WMSとマテハンの連携が企業にとって大きなリスクとなる危険もあります。
【予算に余裕がない場合は、国からの補助金の活用も検討すべき】
WMS・WCSの費用相場を見て「自社ではとてもそんな費用は払えない」と感じられた場合は、国からの補助を受けられないか確認してみることをお勧めします。 国土交通省では、「物流施設におけるDX推進実証事業」として、補助金を受け取る企業を公募しています。 ※補助対象メニュー
詳しくは、国土交通省のWebサイトをご確認ください。 |
参考:国土交通省「物流施設におけるDX推進実証事業 事業説明資料」(p.9)
3-3.10年先を見据えて導入するかどうかを決めることが重要
WMSとマテハンを連携させるメリットとデメリットを比較して迷いが生じた場合は、10年先を見据えた未来図を描いて導入するかどうかを決めましょう。
具体的には、以下のような項目について経営層・物流担当者・情報システム担当者で話し合う必要があります。
10年先を見据えて社内で話し合うべき項目 | |||
1.目的
何のためWMSとマテハンを導入・連携させるのか(それによって自社倉庫のどんな課題を解決したいのか)を明確にする |
|||
2.自動化の範囲
「人間の手・目・頭で行う業務」と「システム・機械で代替する業務」の線引きをする |
|||
3.達成したい目標
何をもって「成功」とするか、作業スピードや削減したい人員の数などの基準値を決める |
このような基準を社内で明確にしないままシステムやマテハンを新たに導入してしまうと、プロジェクトが迷走し、
「多額の費用を投資したが、かえって倉庫業務のサイクルが複雑化し効果を得られなかった」
といった状況に陥る危険性があります。
自社が最終的にどこまで倉庫の自動化・省人化を進めるかをイメージし、その未来図にマッチしたマテハンとシステム(WMSに限らず、WCS・WESなど)を導入することが、リスクを最小限に抑える唯一の方法だと言えるでしょう。
とはいえ、「何をどこまで連携させるのが自社にとって最適かがわからない」という企業様は多いのではないでしょうか。
物流ITコンサルティングサービスを提供する「Rally Growth」では、WMSとマテハンの連携をはじめとする物流DXの支援を行っています。
WMSとマテハンを活用した倉庫改善に不安や迷いがある場合は、ぜひ一度ご相談ください。
4.WMSとマテハンを活用した倉庫の改善案【難易度別に3タイプ】
ここからは、WMSとマテハンを活用した倉庫の改善案を、難易度別に3タイプご紹介します。
・【初級】WMS×個別のマテハンを部分連携
・【中級】WMS×WCS×複数のマテハンを統合連携
・【上級】WMS×WES×WCS×複数のマテハンを全体連携
WMSとマテハンを連携させるにはさまざまなパターンがあり、連携が複雑・高度になるほど予算も時間もかかります。
本章で提案する3タイプをモデルに、
「うちの倉庫で実装するならこのくらいのレベル・規模感が良さそうだ」
といった、自社にとってのベストな倉庫の全体像を描きましょう。
4-1.【初級】WMS×個別のマテハンを部分連携
まずは、WMSと個別のマテハンを部分的に連携させるというパターンです。
WMS×個別のマテハンの部分連携による倉庫運用の改善例 | |
課題 | ピッキングエリアから仕分けエリアまでの商品の搬送を作業員が行うことで、移動に時間が取られていた |
連携内容 | WMSとコンベア(仕分け機能のついたもの)を導入し、両者を連携
→WMSからコンベアの個別WCSへ「オーダー①は仕分け口Aへ、オーダー②は仕分け口Bに」といった指示が可能に |
効果 |
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上の図のように、生産性が著しく低い業務にだけ個別にマテハンを導入し、WMSと連携させます。
連携の構造がシンプルかつ、複数のマテハンを統合制御するWCS(統合WCS)が必要ないため、導入にかかる費用や期間を比較的小さく抑えることが可能です。
将来的には大掛かりな連携を考えている倉庫でも、WMS×マテハン連携の第一歩として低予算で挑戦できる「初級編」と言えるでしょう。
※「個別WCS」はマテハンベンダーが持っているシステムを利用するケースがほとんどであるため、システム開発等のコストがかかることは基本的にありません
4-2.【中級】WMS×WCS×複数のマテハンを統合連携
続いては、WMS×WCS×複数のマテハンを統合連携させるパターンです。
WMS×WCS×複数のマテハンの統合連携による倉庫運用の改善例 | |
課題 |
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連携内容 | WMS・WCS・マテハン(自動倉庫・AGF・ソーター)を導入し、すべてを連携
→WMSから統合制御システム(統合WCS)に「自動倉庫でオーダー①と②をピックアップ」「AGFで仕分けエリアAに運んで」「ソーターで出荷先別に指定のシュートへ」と指示。統合制御システムから個別のマテハンへ指示を送り、各マテハンが連動した動きができるようになる |
効果 |
|
WMSから複数のマテハンを束ねて統合制御する「統合WCS」へ指示を出し、個別のマテハンを制御する「個別WCS」でそれぞれのマテハンを動かすという、最も一般的な連携の形態です。
この連携により、複数のマテハンを協調的に動かすことができ、現場の作業員や管理者は
・指示内容の判断
・各種システム・マテハンが問題なく稼働しているかの監視
という、より重要な業務に集中できるようになります。
4-3.【上級】WMS×WES×WCS×複数のマテハンを全体連携
最後は、WMS×WES×WCS×複数のマテハンを全体連携させるパターンです。
※前述の通り、統合WCSの機能をWESが代替するケースも増えています
WMS×WES×WCS×複数のマテハンの全体連携による倉庫運用の改善例 | |
課題 |
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連携内容 | 既存の設備(WMS・WCS・マテハン(自動倉庫・AGF・DAS)に加え、新たにWESを導入し連携
→WESが倉庫内の全てのリソース(人・機械・システム)のタスクや負荷状況をデータから学習し、最適化した人・機械・システムの動きをシミュレーション・実行 |
効果 | マテハンだけではなく、作業員の動きも最も効率の良いものに最適化され、以前の数倍の入出荷件数をこなせるようになった。 |
こちらは、4-2.【中級】WMS×WCS×複数のマテハンを統合連携をさらに高度化させ、人による判断がほぼ介入しない状態を実現する倉庫運用です。
WESがこれまでの倉庫運用で蓄積されたあらゆるデータをAIのように学習・分析し、
「今、このマテハン(人)をこう動かすと最も効率が良い」
といった判断・指示出しを管理者に代わって行います。
しかし、WESの導入は非常に高度な倉庫運用が可能になる一方で膨大なコストがかかるため、上の図のような連携は決して一般的な方法とは言えません。
WESの費用相場(スクラッチ型) | |||
総コストの相場 (5年間利用した場合を想定) |
内訳 | ||
1~2億円 | 開発費
データ準備・検証 サーバー費 |
倉庫運用にWESを活用するのは、DXに意欲的な一部の企業のみが取り組む「上級編」の連携と言えるでしょう。
5.自社に最適なWMSとマテハンの連携を実現するための4ステップ
続いては、自社に最適なWMSとマテハンの連携を実現するための具体的な流れを、4つのステップで解説します。
自社に最適なWMSとマテハンの連携を実現するための4ステップ | |||
STEP1.現状の倉庫運用における課題を洗い出す | |||
など、WMSとマテハンについて情報収集しはじめた原因となる課題(達成したい目的)を、可能な限り書き出す 例)
|
|||
STEP2.自社に必要なマテハンの種類を洗い出す | |||
STEP1.で洗い出した課題を解決するのに必要なマテハンの種類を特定する
例)
→導入するマテハンの候補:ソーター・DAS・ピッキングロボット
→導入するマテハンの候補:AGF(無人フォークリフト) |
|||
STEP3.ベンダーを選定する(マテハン・WMS・その他関連システム) | |||
それぞれ数社ずつベンダーの候補を絞り、提案依頼書(RFP)を送付 ベンダーが作成した提案書を比較し、希望条件と最もマッチした一社と契約する |
|||
STEP4.プロジェクトを実行する | |||
各ベンダーとタイミングをすり合わせながら、
の順でプロジェクトを実行する ※全体のプロジェクトの音頭を取るのは基本的に依頼主ではあるものの、進捗管理や取りまとめが難しいため、専門のコンサルが間に入るケースが多い |
上記の4ステップのうち、最大の難関とも言えるのがSTEP3.の「ベンダー選定」です。
日本には数多くのWMSベンダー・マテハンベンダーが存在し、特色や得意分野はそれぞれ異なります。
多くの選択肢の中から自社の課題を解決してくれる「最高の一社」を選ぶには、物流の専門知識に基づいた高いリサーチ力・判断力が必要あり、社内の人間だけで意思決定するのは難しいというのが現実です。
以上のことから、本章で紹介した4つのステップは、「物流ITコンサルタント」などの第三者のプロに相談し、並走してもらいながら進行することをお勧めします。
以下の記事では、物流ITコンサルタントがどのようなものかを詳しく解説しています。
ぜひご参考にしてください。
6.マテハン連携に強いWMSベンダー5選
最後は、マテハン連携に強いWMSベンダーを5つご紹介します。
マテハン連携に強いWMSベンダー5選 | |||
ベンダー名 | WMSの製品名 | 提供形態 | 特長 |
株式会社SEAOS | Mr.Stream |
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株式会社セイノー情報サービス | SLIMS |
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株式会社ブライセン | COOOLa |
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株式会社フレームワークス | iWMS G5 |
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ロジスティードソリューションズ株式会社 | ONEsLOGI/クラウド WMSシリーズ |
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日本には30社以上のWMSベンダーが存在しますが、上記の5社はその中でもマテハンとの高度な連携に成功した実績のあるベンダーであり「マテハン連携に強いWMSベンダー」と言えるでしょう。
前章5.自社に最適なWMSとマテハンの連携を実現するための4ステップでもお伝えしたとおり、WMSとマテハンを連携させるにあたって最大の難関となるのが、ベンダー選定です。
最終的に契約するベンダーの絞り込みはプロに相談することをお勧めしますが、
「まずは社内の人間だけである程度まで候補を絞りたい」
「複数社に問い合わせ・見積もりを依頼してみて、判断がつかないようであればコンサルに依頼したい」
といった場合は、上の一覧表をご活用ください。
7.WMSやマテハンの導入・連携が不安な企業様。Rally Growthの「物流ITコンサルタント」に相談ください!
WMSやマテハンとの関係性についてリサーチしていくなかで、
「WMSやマテハン、その他の倉庫システムがどのようなものかはなんとなくわかったが、導入すべきかどうかを判断しかねている」
「自社の倉庫に最適なWMSベンダー・マテハンベンダーが選べない」
「予想以上に費用が高く、失敗した時のリスクを考えると導入に踏み切れない」
といったお悩みをお持ちであれば、物流コンサルティングサービスを手掛ける「Rally Growth」にご相談ください。
Rally Growthとは? | |||
2021年に創立した、ミドルマーケットを中心としたDX化/新規事業構築支援を行う、ビジネスコンサルティングファームです。
代表の園田を中心に物流業界に知見のあるメンバーが集まっており、主に物流DXに関連する案件を中心に、複数の企業を支援しています。 |
Rally Growthの強み | |||
強みその1.多数のWMS導入支援実績 Rally Growthでは、これまで多数の企業にWMS導入支援を行ってきました。 |
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強みその2.豊富な知識に基づいた広い視点での企画・提案ができる これまで物流の改善企画を数多く支援してきた経験から、
など、物流業界の幅広い知識を持っているのは、Rally Growthの大きな強みです。 |
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お客様の支援事例 | |||
【プロジェクト概要】
【プロジェクト背景】 6階建ての延床面積約10万㎡という巨大な専用物流倉庫を建設した同社は、マテリアルハンドリングメーカーと手を組み、RFID(無線自動識別)や自動倉庫、自動搬送機などを取り入れたプロジェクトを発足しました。 【支援内容】 弊社も当プロジェクトに参画し、主に以下3つの支援をさせていただきました。
最適なベンダーを探すべく、ベンダー選定に先立って多種多様なマテハンを活用したオペレーションの設計を行っていましたが、既存のクラウド製品ではマテハンとの連携はもちろん、同社の基幹システムとの連携も難しかったため、オンプレミス型かつフルスクラッチでのシステム構築に踏み切りました。 結果として大規模な物流倉庫の立ち上げに成功し、今では日本最大級の省人化倉庫として日々稼働しています。 |
WMSの導入やマテハンとの連携にはコストがかかり、特に
・大幅なカスタマイズを加えたパッケージ型WMS
・一から開発するフルスクラッチ型WMS
の場合は導入コストが数千万~数億円にのぼる可能性もあります。
多額の予算を割いてWMS・最新マテハンを導入しても、綿密な計画を練らなければ、倉庫業務の改善に十分な効果を発揮させられません。
「長期的な将来を見据えた倉庫運用がしたい」
「徹底的に課題と向き合い、自社にとって最適なシステム・機器を導入したい」
と考えている方こそ、まずはお気軽にお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
Rally Growth株式会社への物流に関するコンサルティング案件のご相談はこちらより承っております。ぜひお気軽にご相談ください。【資料請求】
以下よりRally Growthのサービス資料もご請求いただけます。ご支援の全体像や具体的なご支援プランを掲載していますので、物流を中心としたDX支援のサービスをご検討の方はぜひご一読ください。
<Rally Growth サービス資料イメージ>
8.まとめ
最後に、本記事の重要ポイントをおさらいします。
▼マテハン・WMS・その他関連システムの役割と関係性
【WMS】
倉庫内のさまざまなシステム・機器を繋ぐ情報拠点 【マテハン】 物流業務の省人化・品質向上を促進する機器の総称。WCSによって動きを制御される 【WCS】 マテハンを自動で動かす制御システム 【WES】 WMS・WCSをさらに高度化(省人化)させるためのシステム →マテハンを導入して倉庫業務を高度化させるにはWMSとの連携が必須 →どのシステム・マテハンが必要になるかは、「どのような倉庫運用を実現したいか」によって異なる。自社にとって必要かつ現実的なマテハンとシステムを選定し、連携させることが重要 |
▼WMSとマテハンを連携するメリット・デメリット
【メリット】
・作業の効率が向上する ・作業の精度が向上する 【デメリット】 ・膨大なコストと手間がかかる ・システム障害等で業務が停止する恐れがある →10年先を見据えて導入するかどうかを決めることが重要 |
▼WMSとマテハンを活用した倉庫の改善案
・【初級】WMS×個別のマテハンを部分連携
・【中級】WMS×WCS×複数のマテハンを統合連携 ・【上級】WMS×WES×WCS×複数のマテハンを全体連携 →予算やシステム連携で実現したい未来に合わせて、段階的に進めていくのがお勧め |
▼自社に最適なWMSとマテハンの連携を実現するための4ステップ
・STEP1.現状の倉庫運用における課題を洗い出す
・STEP2.導入するマテハンの種類を選定する ・STEP3.ベンダーを選定する ・STEP4.プロジェクトを実行する →これらの意思決定を社内の人間だけで行うと失敗のリスクあり。物流コンサルタントなどのプロに相談しながら慎重に進めると良い |
本記事の内容が、貴社の倉庫運用改善のきっかけになりましたら幸いです。
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